警備業界、警備会社、警備員における問題点   

2017年5月27日土曜日

警備業者を労災隠しで送検 本来業務以外の作業での骨折を隠ぺい 横手労基署

労働新聞社「警備業者を労災隠しで送検 本来業務以外の作業での骨折を隠ぺい 横手労基署」より 2016/08/01


秋田・横手労働基準監督署は、労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなかった警備業者の㈱アッセンブル(秋田県横手市)と同社の実質的経営者を労働安全衛生法第100条(報告等)違反の容疑で秋田地検横手支部に書類送検した。
平成26年7月31日、同社労働者が秋田県和賀郡の建設工事現場内で右足のかかとを骨折する労働災害が発生している。
入院期間は1カ月半で、休業は4カ月に及ぶ。
被災者は、同工事現場内で、本来の業務ではない「片付け」を現場内に入って行っていた際に怪我をした。
27年1月に「休業保障が支払われず、国民健康保険で病院を受診している」と労基署に相談を寄せたことから、いわゆる労災かくしが明らかになった。


【平成28年7月6日送検】

労働新聞社「警備業者を労災隠しで送検 本来業務以外の作業での骨折を隠ぺい 横手労基署」より 2016/08/01

2017年5月22日月曜日

時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁

産経デジタル「時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁」より 2017/05/17


警備員として働いていた男性(49)=大阪府=が、過重労働により鬱病を発症し、さらに退職を強要されたとして、会社側に計約1300万円の損害賠償などを求める訴訟を大阪地裁に起こしたことが19日、分かった。
男性は24時間勤務を3日間続け、時間外労働が200時間を超える月もあったと主張している。
一方、会社側は同日開かれた第1回口頭弁論で請求棄却を求めた。
訴状によると、男性は平成19年、大阪市内の警備会社「大阪みなと産業」に正社員として入社。
緊急通報への対応や施設巡回などを担当していた。
勤務はシフト制で、午前9時から翌日午前9時までの24時間勤務が多かった。
当初は仮眠が可能だったが、休憩時間の1時間以外は賃金の支給対象とされるようになり、仮眠が許されなくなったとしている。
次第に心身に不調をきたし、25年3月ごろに鬱病を発症。時間外労働は発症前半年間のいずれの月も、過労死ライン(月80時間が目安)を上回る140時間以上に上り、214時間という月もあった。
労働基準監督署は28年3月、過労と鬱病発症との因果関係を認め、労災と認定した。
訴訟で男性側は「会社は過酷労働に対する方策をとらなかった」と安全配慮義務違反を主張。会社が男性に無断で健康保険や雇用保険の喪失届を提出し、退職を迫るなど違法な退職強要があったとも訴えている。
同社は「詳細はコメントできない」としている。

■「仮眠とるな」劣悪環境

「仕事自体にやりがいは感じていた。今は悔しい気持ちでいっぱい」。
現在も鬱病の治療を続ける原告の男性はこう話した。
2020年東京五輪・パラリンピックを控え、建設業と同様に人手不足が目立つ警備業界。そのしわ寄せは個々の従業員に及び、労働環境に深刻な影を落としている。
「大阪南支社機動隊」。男性が勤務していた会社では警察組織になぞらえ、支社管内の詰め所をこう呼んでいた。
広大なエリアを任され、1日200キロを車で走行することも。
必然的に現場到着が遅れ、クレームも増えた。
男性の証言によれば、会社からは「仮眠をとるな」と指示され、きまじめな性格から忠実に従ったという。
「常に緊張して休まるときがなく、トイレすらゆっくりできなかった」。
同僚が休んだ分も「自分が穴を埋めなければ」と四六時中プレッシャーを感じていたと振り返る。
厚生労働省などによると、警備業では男性が9割以上を占め、年齢別では50代以上が3分の2に上る。
平成28年度の有効求人倍率は3・52倍と人手不足が顕著になっている。
業界をめぐっては、NPO法人・労働相談センター(東京)にも「休憩や仮眠時間が定められていない」といった相談が多く寄せられているという。
担当者は「いつ呼び出しがあるか分からず、ほとんど寝られずに緊張状態に置かれている。年配の人は働き口も少なく、劣悪な処遇が広がっているのでは」と推測した。

産経デジタル「時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁」より 2017/05/17


2017年4月27日木曜日

神取忍さんがイメージキャラクター!! 警備専門求人サイト「ケイサーチ!」の運営及び人材紹介サービスを開始

PRTIMES[神取忍さんがイメージキャラクター!! 警備専門求人サイト「ケイサーチ!」の運営及び人材紹介サービスを開始]より  2017/04/11


~「警備には夢がある」我々は求人サイトを通して証明してみせます~

 株式会社日本総合ビジネス(所在地:東京都渋谷区笹塚/代表取締役社長:清水弘一)は、警備業界に特化した求人サイト「ケイサーチ!」( http://www.keibi-baito.com/ )の運営を411日より開始しました。
「ケイサーチ!」では警備員に関する求人記事や特集を掲載。
検索機能を使えば自分に合った求人を探すことが可能です。
さらに警備員専門の人材紹介サービスも合わせてスタート!警備を専門に扱っているため、警備員への転職に関するノウハウはどこにも負けません。

【サイト名】警備員のバイト・求人情報なら「ケイサーチ!」
URLhttp://www.keibi-baito.com/
【イメージキャラクター】神取忍

警備求人サービスを始めたきっかけ
弊社はタクシー専門転職サイト「転職道.COMhttps://www.tenshokudou.com/)」「タクシーハローワーク(http://www.taxi-sj.com/)」の運営並びにタクシードライバー人材紹介サービスを10年以上提供してきました。
タクシー業界は現在でも人材確保の問題に悩まされています。
求人サイトを通してタクシードライバー人材の紹介はもちろん、多くの方にタクシー業界のことを知って貰えるように努めてきました。
そこで今回、弊社はタクシードライバーと似た特色を持ち、同じ問題を抱えている警備業界に着目しました。

・警備業界の採用状況について

警備業界は慢性的な人材不足に陥っています。
2016年においては警備を含めた保安業界の有効求人倍率が5倍以上に達しました。
警備員の募集に関しては多額の広告費を費やしてもなかなか採用が困難な状況です。
それでも2020年開催の東京五輪までに警備会社は増員したいところが現状です。

ケイサーチ!の主なコンテンツ
【求人詳細ページ】
求人記事ページは現在500件以上に達しています。
記事では求人内容の他に会社の特徴や概要を画像と共に掲載。実際に会社に足を運んで撮影した画像を掲載しているため、会社のそのままの様子を知ることができます。

【特集掲載】
花火大会などの季節限定の求人や女性警備の特集など、定期的に内容を変えて特集記事を取り上げます。

【無料転職相談サービス】
求職者の就職や転職をコンサルタントがお手伝いさせて頂くサービスです。
警備業界に精通したコンサルタントがマンツーマンで求職者にピッタリの警備会社をご案内させて頂きます。
費用は一切かかりません。

【注目の5社】
トップページの右側に特別求人枠をご用意。
この部分の掲載枠は最大5枠までとなっており、毎月各企業の求人をランダムで掲載しております。

また、イメージキャラクターとして神取忍さんを起用しています。

 ■
ケイサーチ!の強み
・警備に特化した求人広告を掲載している。
・求人記事を掲載するだけで終わらず、無料相談サービスもあるため安心してご利用頂ける。
・警備を専門に扱っているため警備に関する知識や転職ノウハウが豊富

また、求職者に対するメリットとしては、
・求人記事では会社の様子や求人情報を知ることができる。
・電話やメールによる転職支援サービスもあるので、警備員の仕事が初めてという場合でも相談・応募が簡単にできる。

一方、警備会社に対するメリットとして
・会社のありのままの姿を求職者に知って頂くことができる。
・人材紹介サービスにより会社が求める人材を確保することができる。
が挙げられます。

 ■
最後にお伝えしたいこと
私たちは「ケイサーチ!」を通して多くの方に警備員の仕事や業界に目を向けてほしいと考えています。
仕事を探している人や警備業務を取り扱っている企業様にとって価値のある求人サイトにするため今後も改善を進めて行く予定です。
そしてこの取り組みが警備業界の採用状況に良い影響をもたらし、優秀な人材を獲得していくための活動になればと期待しています。

警備の仕事には夢がある、それをお伝えすることが私たちの使命です。

◆本件に関する問合せ先
株式会社日本総合ビジネス 広報担当:小山田、田中
TEL
03-5352-7770 FAX03-5352-7771
MAIL
info@japan-b.com
HP
http://www.japan-b.com/

運営サイト:【求人情報】
警備専門求人サイト「ケイサーチ!」:http://www.keibi-baito.com/
タクシー求人サイト「転職道.com」:https://www.tenshokudou.com/
タクシー人材紹介サービス「タクシーハローワーク」:http://www.taxi-sj.com/

PRTIMES[神取忍さんがイメージキャラクター!! 警備専門求人サイト「ケイサーチ!」の運営及び人材紹介サービスを開始]より  2017/04/11

2017年3月17日金曜日

企業の43%が正社員不足 警備や建設、運輸で顕著

東京新聞 TOKYO Web「企業の43%が正社員不足 警備や建設、運輸で顕著」より 2017/02/26


人手不足が深刻だ。
帝国データバンクの調査によると、正社員が不足していると答えた企業の割合が43・9%と過去十年で最も高くなった。
背景にはサービス競争の過熱や二〇二〇年の東京五輪を見据えた事業拡大がある。
企業は待遇を改善するなどして人材確保に躍起だが、業務量の増加に追い付かない状況だ。
「ここ二年ほどで荷物が急激に増え、ドライバーなどの体制が追いついていない」。
ネット通販大手アマゾンの荷物を扱う宅配大手ヤマト運輸の関係者は話す。
春闘では労働組合が、荷物の引き受け量を抑えるなど対策を求める異例の事態となり、会社側も何らかの対応を取るとみられる。
飲食業界では、ロイヤルホストが一月末までに全店舗で二十四時間営業をやめた。
すかいらーくも「ガスト」「ジョナサン」の営業時間を短縮。
同社幹部は「アルバイトが集まらず社員が深夜シフトに入らざるを得なくなると、忙しい昼夜の営業に支障が出る」と話す。
東京五輪に向け工事が増えている建設業界も労働者不足の上位業種だ。
「給料を上げないと人が取れない」(業界関係者)といい、日本建設業連合会によると、業界賃金は一五年までの四年間で一割超上昇。
人件費の増加は経営を圧迫している。
一月に実施し一万百九十五社が回答した帝国データの調査では、警備や建設、運輸といった業種で正社員不足が目立つ。
今後も業務量は増加傾向が続くとみて、安定経営には長期で働く正社員の確保が欠かせないと考えている企業が多いようだ。
三月から本格化する来年春卒業の大学生などの就職活動は売り手市場が予想される。

東京新聞 TOKYO Web「企業の43%が正社員不足 警備や建設、運輸で顕著」より 2017/02/26



2017年3月3日金曜日

空港の検査員大量離職 背景は?

NHK NEWS WEB (WEB特集)「空港の検査員大量離職 背景は?」より 2017/02/15


ハイジャックやテロを防ぐため、旅客機に乗る前に空港で必ず行うのが、手荷物などを確認する「保安検査」です。
この検査を担当するのが保安検査員ですが、成田空港では、この検査員が大勢辞めてしまう事態が起きています。
時間帯によっては人員が限られ、保安検査場のレーンが開けられず、混雑が起きるケースも出ています。
なぜ大量離職が起きているのか、千葉放送局・成田支局の地曳創陽記者が取材しました。

離職率30%の衝撃

空港の保安検査は民間の検査会社などが行っています。
成田空港の検査員は平成27年度当初は900人ほどが働いていました。
しかし、検査会社などによりますと、このうちおよそ290人、率にして30%余りが1年間に辞めていることがわかりました。
おおむね3人に1人が辞めている計算になります。
こうした検査員の高い離職率はここ数年続いているといいます。

離職の背景には何が

多くの検査員が離職する背景には、勤務時間や給与などの待遇面に課題があるといわれています。
検査員の石川美柚さん(19)の勤務に密着しました。
空港での仕事に憧れて、去年入社した石川さんは、保安検査場で乗客のボディーチェックや荷物の中身を確認する仕事を担当しています。
取材した日は、朝7時からの勤務でした。
財布から小銭を取り出して小型のナイフなどが隠されていないか、水筒の中のにおいをかいでガソリンなどの危険な液体が入っていないかなど、細かく荷物を調べていました。
見逃しは許されない気の抜けない作業です。
検査場での作業は、出発する便の数に応じて、1日に4回から5回ほど小刻みに組まれています。
その間は休憩時間となり、勤務時間には含まれません。
立ちっぱなしの仕事を終えて帰宅したのは、寮を出てから15時間後の午後9時でした。
不規則な勤務で、ほとんど自分の時間がとれないという石川さんですが、給料は手取りで月15万円ほどです。

高い技能も求められる

さらに、検査員は専門的な技能が求められます。
現場の責任者に就ける「国家資格」や複数の社内の試験があり、日々の勉強が欠かせないといいます。
石川さんも、X線モニターで危険物を見分ける技能を身につけるため、部屋に戻ったあとすぐに机に向かって勉強をしていました。
物をX線に通すと、モニターには金属の部分だけが黒く映ります。
そのため元の形とは違った画像が映し出されます。
刃物や特殊なライターなど、持ち込めないさまざまな物がどのような形に映るか覚えるとともに、それを瞬時に見分ける判断力を鍛えなくてはいけません。
この検査会社では、訓練をした検査員が1人前になるのに、少なくとも3年はかかるとしています。
石川さんは「テロやハイジャックを絶対に起こさないためにしっかり勉強して、知識を身につけて防ぎたい」と仕事への思いを語ったうえで「拘束時間が長く、給料も低いので続けられるのか不安です」と話していました。

航空会社との契約関係

こうした待遇の背景には何があるのでしょうか。
実は、保安検査は航空会社が民間の検査会社などに委託して行っています。
この契約料が検査会社の主な収入になっていて、検査員に給料が支払われています。
規模の大きな空港では検査会社との契約は、空港に乗り入れている航空会社で作る協議会が入札を行って決めているため、契約料の引き上げには各航空会社のそろった理解が必要になります。
そのため、検査会社だけで待遇を改善するのは難しいのが実情です。
ある検査会社では、社員寮を新築して生活環境の改善を進めたり、技能が高い検査員を表彰したりして、人材の定着を図ってきましたが、離職を食い止められていないといいます。
検査会社の担当者は「空の安全を守るという検査員の使命感で何とかもっています。
環境を変えたいと力を入れていますが、われわれだけでは見直すことができません」と話していました。

退職する熟練の検査員

待遇の改善が望めないとして、辞める熟練の検査員もいます。
去年、退職した神井裕二さん(30)に話を聞きました。神井さんは最も難しい国家資格(空港保安警備業務1級)を取得し、現場の責任者も務めていました。
神井さんは妻と3歳の子どもと3人で暮らしています。
退職前の給料は、手取りで月およそ22万円でしたが、8年半働いて上がった基本給はわずかで、さらなる昇給も望めなかったということです。
また不規則な勤務では、子どもと過ごす時間もとれないのではと考え、心残りもありましたが、転職を決意したといいます。神井さんは「拘束時間と給与が見合っていないので、仕事を続けるのは厳しかった。
将来を考えるのはまず無理でした」と話していました。

全国の空港の状況把握は

こうした検査員の高い離職率は、決して成田空港だけの問題ではないといえます。羽田空港や関西空港は、24時間の運用で勤務環境は厳しく、離職率が高いケースもあると話す関係者もいます。
ただ、全国の空港の状況はまだ正確に分かっていないのが現状です。
国も調査をしていますが、航空会社と検査会社の契約に関わるため、完全な把握は難しいと話しています。

空の安全の人材確保

日本では、保安検査の責任は航空会社が負うことが、法律で定められています。しかし、例えばアメリカでは公務員が保安検査を行っていて、国が責任を持って行っているところもあります。安全に対するコストへの考え方を見直し、より国が関与すべきだとする専門家もいます。
大妻女子大学の戸崎肇教授は「日本は根本的な危機を体験したことがないので、安全というのは保障するけどそこにお金をかけるということがない」と指摘したうえで「東京オリンピック・パラリンピックに向けて、保安検査の重要性を国としてもしっかり認識して、待遇改善、そして人材育成により努めていくべきだ」と話していました。
成田空港では、検査員の大量離職でノウハウの継承が進まず、検査の質が低下してしまうのではないかという懸念の声も聞こえます。
全国の実態も把握しながら、空の安全を守る人材をどう確保していくのか、関係者で考えていく必要があると感じました。

(千葉放送局 地曳創陽 記者)

NHK NEWS WEB (WEB特集)「空港の検査員大量離職 背景は?」より 2017/02/15



2017年2月10日金曜日

貧困と生活保護(44) 最低賃金は、本当に生活保護の水準を上回ったか?

ヨミドクター「貧困と生活保護(44) 最低賃金は、本当に生活保護の水準を上回ったか?」より 2016/12/2

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161201-OYTET50015/

2000年代の半ばから、働いても満足な収入を得られないワーキングプアが日本でも問題になってきました。
企業の人件費抑制による賃金水準の低下、非正規労働者の拡大が大きな要因です。
それに関連して、最低賃金で得る収入より生活保護でもらえるお金のほうが多いのはおかしい、という意見がしばしば見られます。
その意見は、半分は間違いで、半分は正しいと思います。
間違っているのは、疑問を持つ方向です。
最低賃金が生活保護の水準より少なくてよいのか、と問いかけて、最低賃金の低さを問題にするのが、法律上もスジの通る方向です。
正しいと思うのは、最低賃金と生活保護の逆転現象がまだあるという点です。
14年10月の最低賃金引き上げで逆転現象は解消したと厚生労働省は説明していますが、両者を比較するときの計算方法に問題があり、現実の生活から見ると、最低賃金がまだまだ低すぎるとも考えられるのです。
安倍政権は15年11月、最低賃金を毎年引き上げ、全国加重平均で時給1000円をめざす方針を打ち出しました。
貧困を減らし、経済を好転させるには、中小零細企業を支援しつつ最低賃金をもっと引き上げ、労働者への配分を高めることが重要でしょう。
そのためにも、最低賃金と生活保護の比較方法を見直す必要があります。

最低賃金は、どういう制度か

最低賃金法は、時間あたり賃金の最低額を保障する法律です(1959年制定)。
地域別の最低賃金(都道府県ごと)と産業別の最低賃金(国単位または都道府県単位)を国が定め、それより低い時給しか払わなかった使用者は刑事罰の対象になります。
労使が合意して最低賃金に満たない契約をしても無効で、最低賃金額の契約として扱われます。
地域別の最低賃金は雇用契約であれば、不法就労の外国人を含め、すべての労働者に原則として適用されます。
派遣労働者には派遣先での最低賃金が適用されます。
ただし、一律に適用すると雇用機会を狭めるおそれがあるとして、著しく労働能力の低い障害者、試用期間中、基礎的技能などの認定職業訓練中、軽易な業務、断続的労働については、都道府県労働局長の特例許可を受けた場合だけ、減額した契約が認められます。
また、同居の親族のみの事業所、家事使用人には適用されません。
最低賃金の考え方のおおもとは、労働基準法1条の「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を 充み たすべきものでなければならない」という規定です。
そのうち賃金水準の部分を具体化したのが最低賃金法と考えることができます。
実際の最低賃金額の改定は2段階です。
毎年夏、厚生労働省の中央最低賃金審議会(労働者、使用者、公益代表の委員が同数)が統計データや労使へのヒアリングなどをもとに、金額改定のための目安を示します。
都道府県別にある地方最低賃金審議会(同様の構成)は、それを参考にしながら地域の実情に応じた改定を検討します。
その意見を踏まえて地方労働局長が地域別の最低賃金額を定め、近年は通常、10月から施行します。中央、地方の審議会は、労使交渉の場のような性格も持っています。

生活保護の水準を下回らないように、最低賃金を決める

地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力の3点を考慮して定めるとされてきました(最低賃金法9条2項)。
絶対的な物差しはなかったのです。
しかし、社会のセーフティーネットの役割を重視した07年11月の法改正で「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」という規定(9条3項)が追加されました。
この法改正以降、最低賃金は、生活保護の水準以上にしないといけなくなったわけです。
生活保護の水準を踏まえて最低賃金を決めるのであって、逆方向はありません。
生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活ができる水準を設定するもので、最低賃金の動向によって上下させるのは筋違いです。
生活保護の給付水準を抑え込むと、最低賃金は上がりにくくなります。

最低賃金が低くて済む計算方法が、比較に用いられている

最低賃金の額は個人単位、時間単位、都道府県単位なのに対し、生活保護の額は世帯単位、月単位、市町村ごとに定めた級地単位です。
そのままでは比べられません。
そこで08年度に中央最低賃金審議会の「目安に関する小委員会」が、比較のための計算方法を決め、現在も同じ方法が用いられています。
この小委員会では労働者側の委員と使用者側の委員の意見が対立したのですが、公益委員がほぼ使用者側委員の意見に沿った計算方法を示し、それが採用されました。
基本的な計算式は、次の通りです。

最低賃金による月収=最低賃金額×1か月の労働時間×可処分所得比率

生活保護による月収=生活扶助+住宅扶助

この両者を比べ、最低賃金による月収が生活保護より少なくならない最低賃金額を逆算するわけです。
式の形を変えると、生活保護並みの月収を得るのに必要な最低賃金(時給)は、次の計算になります。

少なくとも必要な最低賃金=(生活扶助+住宅扶助)÷1か月の労働時間÷可処分所得比率

問題は、それぞれの項目の具体的な数値をどこから持ってくるかです。
結論から言うと、最低賃金ができるだけ低くて済むような計算方法になっています。

<労働時間数>

最低賃金を算出する時に用いる1か月の労働時間は173.8時間。
これは週40時間×年間の週の数(365日/7日)÷12か月という計算です。
週の法定労働時間の上限で、祝日も夏休みも年末年始の休みもない場合の労働時間数です。
たくさんの時間を働けば、一定の月収を得るのに必要な時給は低くなります。
厚労省「毎月勤労統計調査」の15年分確報によると、フルタイム労働者の所定内労働時間は平均月154.3時間です。
かりに、そちらの時間数で計算すれば、生活保護並みの収入を得るための最低賃金は12.6%高くなります。

<可処分所得比率>

通常の労働者の賃金からは所得税・住民税・社会保険料が天引きされますが、生活保護なら原則かかりません。
そこで勤労収入のうち何%が手取りになるかを想定するのが「可処分所得比率」です。
中央最低賃金審議会は、前々年度に最低賃金がいちばん低かった地域での試算を用いています。
今年(16年10月施行)の改定で用いたのは、14年度の沖縄県の83.3%。
可処分所得比率が最も高くなる地域です。
これより最低賃金の高い地域では税・社会保険料が増え、可処分所得比率が下がります(手取り割合が減る)。
したがって、この方式で計算した最低賃金だと、多くの都道府県で生活保護の水準を下回ります。
税・社会保険料の負担は次第に上がっているので、新しい最低賃金が適用される時点では計算した時より可処分所得比率が下がり、手取りが減るというタイムラグの問題もあります。

<生活扶助>

生活扶助の基準額は、6段階ある級地区分と世帯構成員の年齢層によって違ってきます。
中央最低賃金審議会は、若年の単身者(12~19歳)を想定し、冬季加算、期末一時扶助を加えた月額を級地ごとに算出します。
それを各都道府県内の級地別の総人口で加重平均したものを、その都道府県の生活扶助額としています。
郡部まで含めた人口加重平均なので、県庁所在地など都市部の保護基準より低い額になります。
裏返すと、この方式で計算した最低賃金だと、県庁所在地では生活保護の水準を下回ります。
また12~19歳はかつて、生活扶助のうち1類(個人需要分)の額がいちばん高かったのですが、現在の保護基準では41~59歳の層のほうがやや高くなっています。

<住宅扶助>

その都道府県で支出された住宅扶助の実績総額を、保護世帯の総数で割った数字を用いています。
複数人数の世帯の住宅扶助額も加味される一方、持ち家や長期の入院・施設入所中で住宅扶助ゼロの世帯や、低家賃の公営住宅で暮らす世帯もカウントされます。
県庁所在地などの都市部で民間賃貸住宅に入居している時の住宅扶助限度額は、実績平均値より大幅に高いので、この方式で計算した最低賃金だと、都市部で生活保護並みの賃貸住宅には住むのは難しくなります。

<勤労控除>

働いていても収入が足りなくて生活保護を利用している場合、勤労収入の月額に応じて、その一部が収入認定から除外される「勤労控除」があります。
仕事用の服、身だしなみ、外食、つきあい、資料など、仕事をするためにかかる必要経費を認めているわけです。
月10万円稼げば、2万3600円が控除されます。
ところが最低賃金の比較計算では、これをまったく考慮していません。

<医療扶助など>

生活保護では、ほかに医療扶助、介護扶助、教育扶助、生業扶助、出産扶助、葬祭扶助があります。
これらは比較計算に入っていません。
生活扶助と別枠で医療費が全額公費負担になる生活保護と違い、最低賃金だけで暮らすなら医療費がかかるのに、無視しているわけです。
歯科を含めて医療をまったく受けないという空想の上に立った最低賃金の設定になります。

<家族は考慮せず>

最低賃金の比較計算は、単身者を想定しています。
家族を養う場合は、税金の扶養控除があるとしても、生活するのに足りない金額になります。
たとえばシングルマザーの場合、子どもの生活費、教育費などがかかります。
最低賃金の仕事だと。
児童手当・児童扶養手当を受けても保護基準を下回る暮らしになるでしょう。
もちろん、最低賃金はそこまでの生活保障を担う制度ではないという考え方もあります。

逆転現象は解消したと言うけれど……

最低賃金法改正の後、先の比較計算式で厚労省が検証したところ、08年夏の時点で、最低賃金と生活保護の逆転現象が12都道府県にありました。
そこで最低賃金が毎年、少しずつ引き上げられたのですが、翌年にはまた逆転現象が生まれました。
その間、生活保護基準は据え置きだったのに、奇妙な事態でした。
原因は比較計算式、とりわけ可処分所得比率と住宅扶助実績値の変動でした。
14年夏の時点でも5都府県で逆転現象が残っており、同年秋の最低賃金アップでようやく解消されたと厚労省は説明しました。
その後、政府の意向を受けて15年秋、16年秋と、従来より大幅な最低賃金引き上げが行われました。
16年10月に施行された 地域別最低賃金の一覧 を見ると、最高が東京の932円、最低が宮崎・沖縄の714円。
全国加重平均で823円(前年798円)となっています。
一方で生活保護は、13年8月から15年4月にかけて生活扶助本体と期末一時扶助、15年7月から住宅扶助限度額、15年10月から冬季加算と、立て続けに基準の引き下げが行われました。
であれば、さすがに最低賃金は、生活保護よりだいぶ高くなったんだろう、と思うでしょう。
ところが、けっしてそうとは言えないのです。

今でも生活保護のほうが手取りが多くなるケース

例として、現在の東京都の最低賃金932円でどれぐらいの手取り収入になるか、若者の場合で試算してみます。
最低賃金以外の手当、ボーナス、公的給付はゼロとしています。

◆東京都の最低賃金労働者の手取りの試算(手当・ボーナス・介護保険料なし)

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一方、生活保護の場合は、20代の単身者で月平均額を計算すると、こうなります。

◆生活保護の基準額(東京23区内、20代単身)

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最低賃金だけでは、普通に働いて手取りは11万円台、目いっぱい働いても13万円台で、生活保護より少ないのです。
厚生年金保険料の徴収は将来に役立ちますが、医療にかかれば、手取りの中から医療費の自己負担をしないといけません。
この賃金水準では、これまで生活保護だった人が就職して生活保護を脱却しても、生活はかえって苦しくなります。
実は、この収入額だと、勤労控除を考慮すれば、働きながら生活保護を受けて、不足を補ってもらってよいレベルなのです。

日本の最低賃金はかなり低い

最低賃金と生活保護の比較に、もっと生活実態に合った計算方法を用いれば、たいていの都道府県で今も逆転現象が存在するでしょう。
最低賃金が全国加重平均で749円だった12年時点で、保護の要否判定がギリギリの水準には1159円、就労自立に足りる水準には1233円の最低賃金が必要になったという試算もあります(桜井啓太氏)。
若者を中心にした労働運動グループは最近、最低賃金として時給1500円を求めています。
それもあながち乱暴な主張とは言えないわけです。日本の最低賃金は先進国ではかなり低いほうです。
欧州では日本円にして1000円以上の国が多く、米国でも今年に入ってカリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントンDCなどが時給15ドルへの引き上げを決めています。

読売新聞大阪本社編集委員 原昌平(はら・しょうへい)

*参考文献:「最低賃金と生活保護の逆転現象発生のメカニズムとその効果」(桜井啓太、大原社会問題研究所雑誌663号、2014年)、『最低所得保障』(駒村康平編、岩波書店、2010年)

ヨミドクター「貧困と生活保護(44) 最低賃金は、本当に生活保護の水準を上回ったか?」より 2016/12/2

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161201-OYTET50015/


2017年1月12日木曜日

厚労省が都道府県労働局に通達


警備保障タイムズ「厚労省が都道府県労働局に通達」より 2016/2/11


警備員確保へ支援強化

厚生労働省は2月4日、都道府県労働局に対して「警備業人材確保対策の実施」を通達した。
警備業の有効求人倍率が他業種に比べて高いことや、東京オリンピック・パラリンピックでの警備員不足が見込まれることから、支援強化を図ることとした。
全国のハローワークでは今後、求職者へのパンフレットの配布など警備業務のPRや警備業への就業希望者への働きかけが強化される。

ハローワーク パンフ配布


公共職業安定所(ハローワーク)を中心に行われる対策は、求職者と求人者(警備会社)それぞれへの支援から構成される。

求職者への支援では、警備業での就業経験がない人で、警備業での就業に興味があるものの経験や資格を持たない人に、警備業に関するパンフレットの配布やセミナーなどの開催で、警備業務への理解を深めてもらう。
使用するパンフは、警備会社や警備業協会などが作成したものを用い、パンフは求めに応じ窓口などハローワーク内に備え置く。
セミナーは、警備業の仕事内容や就業の際の心構えなどをテーマとし、警備業への理解促進や就業希望者が増加するよう努める。
また、警備業未経験者や長期の職業上のブランクのある人には、「予約制」や「担当者制」を活用したきめ細かな職業相談や職業紹介などの支援を行う。
一方、警備会社には、求人受理の際に業務内容や深夜勤務の頻度などの労働条件、教育訓練や福利厚生面などの求人条件について十分聴取し、求職者の希望収入や希望勤務時間などの資料を提示するなど、求人条件が可能な限り求職者のニーズに沿ったものとなるよう助言や指導を行う。
また、求人が充足しない原因として、賃金や勤務時間などの求人条件が求職者の希望条件に満たない、求人票の記載が不明確――などが考えられることから、(1)求職者が希望する条件(2)実際に充足した(成功した)求人条件の情報提供(3)成功事例に基づいた求人条件の設定や変更の提案(4)分かりやすい求人票作成への相談・援助――などを行う。
さらに、警備会社のニーズに基づき、同求人に適合すると判断される求職者を選定、応募の意思を確認した上で警備会社に紹介するなど、求人側からの能動的なマッチングを推進する。
このほかにハローワークでは、現場見学会や小規模の就職面接会なども開催するとともに、事業所の雇用管理改善の指導や援助なども行う。
社会保険については、ハローワークに申し込まれる求人に、厚生年金などへの加入が適正な内容で明示されるよう、加入の確認と指導を行う。
これまで同省は、人手不足が深刻な「介護」、「保育」、「看護」などの業種にも同様の対策を実施してきた。
警備業については依然として他業種に比べて有効求人率が高いことや平成32年開催の東京五輪を見据えて今回の対策に踏み切った。
今後、同対策の実施に当たっては、都道府県警備業協会など地域の関係団体と連携して行っていく。

警備保障タイムズ「厚労省が都道府県労働局に通達」より 2016/2/11