警備業界 尊敬できない上司の命令で出動する昭和のサラリーマンたち | 警備業界、警備会社、警備員における問題点   

2016年10月5日水曜日

警備業界 尊敬できない上司の命令で出動する昭和のサラリーマンたち

ニコニコニュース「警備業界 尊敬できない上司の命令で出動する昭和のサラリーマンたち」より


国内では盛り上がりに欠けるロンドンオリンピックだが、それでも日本のメダル獲得の期待が大きいのが柔道やレスリングだ。
柔道の中矢力選手、レスリングの湯元健一選手、高谷惣亮選手、吉田沙保里選手、伊調馨選手が在籍するALSOKは、正式社名を綜合警備保障という警備会社である。
綜合警備保障は、セコムに次ぐ業界第2位の警備会社。
1位と2位の2社だけで、日本の警備市場の30%のシェアを占めている。
今回は、警備業界について、キャリコネに寄せられた口コミを元に分析していこう。

市場規模は3兆円を超えたところで頭打ち

警備業界の市場規模は1990年には1兆円以下だった。
それがオウム真理教事件を経た1997年には2兆円を突破。
アメリカ同時多発テロ事件を経た2003年には3兆円を突破した。
そこまでは順調な成長だったが、その後の10年は一進一退を繰り返し、成長は完全に頭打ちになっている。

【警備ビジネスの市場規模】

市場で売上高が100億円を超える大手は5社しかない。
あとは売上高100億円未満の中小警備会社が999%を占めるというピラミッド構造だ。
警備サービスは、警備業務検定の合格者の配置を義務づけられているのは空港、原発、貴重品輸送、核燃料輸送、交通誘導など一部だけだ。
それ以外はアルバイト警備員でもかまわない。
例えば、ビルの「常駐警備」やイベント警備は、警備員の数さえ確保できれば、それこそ机と電話だけで開業できるビジネスと言ってもいい。
業界経験者や警察OBなどは独立・起業しやすい。
全国の業者数が9000を超えるのは、そのためである。
全国の警備員の数は2011年末で約53万人だ。(警察庁生活安全局「平成23年における警備業の概況」による)
もっとも、大学新卒者が応募するのは上場企業の上位5社が大部分だろう。
そんな大手は警報装置やITシステムを駆使した「機械警備」の比率が大きくなっている。
それは次の声が象徴している。

「業務内容は警備というよりもむしろ技術屋の色が濃く、内容は多岐に渡っているため簡単な仕事ではない」(セコムの20代前半の男性社員)

警備会社に総合職で入社した新卒の主な業務は、スーツを着て企業や家庭にセキュリティシステムを提案して売り込む営業活動だ。
それは見た目も勤務形態も他の業界のサラリーマンとほとんど変わらない。

給料は悪くないが長時間勤務が辛い仕事

まずは、警備会社についての誤解を解いておこう。
警備会社とは「犯罪と戦う正義のヒーロー」ではない。
それは次の口コミからもわかる。

「最初は、安全を守る企業と感じて入社しましたが、警備業法で、警報が鳴っても駆けつけるまでの時間が結構長くても良かったり、犯人と出会っても戦ったり捕まえたりしなくてよかったりするので、結局は安全を守れるわけではないのでは?」(綜合警備保障の20代後半の女性社員)

本物の窃盗犯や放火犯に現場で遭遇して、危険な目にあったという体験談の口コミも見られた。
しかし、犯人を逮捕したのは警察だったという。
警備業界は10年ほど前まで高成長を続け景気が良かったせいか、大手は企業規模が大きく給与水準や福利厚生もそれなりに良い。
そのため、サービス業ではイヤと言うほど聞かされる「給料が安い」「働きに報酬が見合っていない」というボヤキは、この業界の正社員に関してはあまり聞こえてこない。

「毎月残業代がかなりの額であった為、同年代と比べると幾分多くもらっていたと思います。総合的に、給与面では不満はなかったです」(セコムの20代前半の男性社員、年収450万円)

20代で結婚し、子供もいないという状況であれば比較的高給の部類に入るかもしれません。年収400450万。しかしながら30代後半でも年収は変わりません。役職がついたとしても500万を超えることは考えにくいです。30代後半で400万円台前半の社員は数多くいます」(綜合警備保障の20代後半の男性社員、年収510万円)

ただし、「夜勤があって勤務時間が不規則」「残業が多い」という声は、現場や現場に近い部署からよく聞かれることだ。

「支店によっては、ハチャメチャなシフトを組まされたりします。昼過ぎに出勤して次の日の昼前まで勤務が続き、さらにその夕方からまた出勤になっていたりと。暇で睡眠がとれれば、まだマシなんだけど、ふつうに忙しいと文字通りふらふらになります。自動車事故がおそろしいです。健康面も」(セコムの20代前半の男性社員)

36時間連続勤務という信じられない制度があり、そのハードさ故か離職率も相当高いです」(綜合警備保障の30代前半の男性正員)

綜合警備保障の別の社員からも36時間連続勤務後のクルマの運転は怖いという声は聞かれた。

中間管理職に不満が集中 「尊敬できる上司はいない」
 
警備業界で目立つのが、社内の人間関係、特に上司との関係が悪いという口コミである。
警備の現場ではリーダーを「隊長」と呼んでいるように警察や消防や自衛隊のような軍隊的階級組織で、指揮命令系統は明確かつ厳格だ。
各員はトップダウンの意思決定を迅速、正確に下に伝え、行動させなければならない。そうでなければ業務に支障をきたす。
おそらく体育会系の雰囲気に慣れていればなじみやすいだろう。
現場はそれでいいのだが、問題なのは、そんな組織のメンタリティが「ネクタイ組」とも呼ばれるホワイトカラーの職場にも持ち込まれていること。
例えば、こんなイベントだ。

3の倍数月は強化月間と称し、ノルマが倍増。特に12月は社員一人当たり7千円の『参加費』を払い、決起大会なるものが開催され、決意表明、商品名を唱えながらのダンスなどが、盛大におこなわれる」(セコムの20代前半の女性社員) 

軍隊的な組織は危機の時には強いが、中間管理職が部下の言うことには耳を貸さず、上意下達のみ、無理な命令もおかまいなしで、人の好き嫌いを露骨に口にし、時にはパワハラに発展するような人物を生みやすい。

「トップダウンがすごいので中間管理職の荒み方が激しい。上から言われたことを10倍にして下に流す。こんなやり方は本意じゃ無いんだけどしょうがないかな?」(セコムの30代前半の男性社員)

「この会社は、パワハラ・イジメがあります。気に入らない人が居れば、言葉・態度など攻撃してきます。(略)効率が悪く度々残業しました。効率化を上司に言っても、聞く耳無し。率直に言うと、労働環境は良くないです」(CSPの元社員の20代前半の女性)

「社風は、社会主義国家のよう。職場に活気はなく、悲壮感が漂っている。小さな問題ともいえないような問題をつっつき、問題を起こした本人を血祭りにあげる。そのあと、直属の上司を処分する。尊敬できるような上司はいない」(綜合警備保障の20代後半の男性社員)

この業界は男性中心社会なので女性ががんばっても管理職登用は少なく、経営幹部まで昇りつめる人はほとんどいないという。
女性管理職が比較的多いセコムでは、女性社員からこんな不満があがった。

「女性の上司が多いからこそ、この職場は雰囲気が悪く、過ごしにくい職場になっているのだと思う。管理職の女性はあまり尊敬できる人がいないためみんながなりたいと思うものでない」(セコムの20代後半の女性社員)

「女の敵は女」ということなのだろうか。

ゴマすり、年功序列、天下り昭和の影をひきずる社風
 
警備各社は「上司にゴマをすった者が出世する」という、「昭和」の影を引きずる社風も特徴的だ。
当然、社員も、その体質に染まってしまう。
そのため、ゴマをすって昇進した中間管理職は、部下がゴマをすることも暗に求めるものらしい。

「社内試験があるが、結局は上司に気にいられている者が出世する。どうしても出世したいのならば、上司に媚を売り自分を捨てて、毎日ペコペコするしかない」(綜合警備保障の20代前半の男性社員)

「上司にクセのある人物が多く、部下はいかに上司に気に入られるかで出世が決まるきらいがあり。実力だけではなかなか上には登りつめることは難しい」(東洋テックの20代後半の男性社員)

「上司に気に入られるのが近道でしょう。また、部下の手柄を自分の物にしたり、他人を蹴落として自分が上に上がるのもあります」(CSP30代前半の男性正社員)

次の話は、別の意味で「昭和的」だろう。

「出世は完全に順番待ちだと感じました。上の人が外れるとそのポジションに次の人を上げるという感じです。実際、先輩で、『お前を課長にするにはまだ早いと思ったけど、ポジションが開いたから』と言われた人がいました」(セコムの30代前半の男性正社員)

警備会社の社員の間であまり評判がよろしくないのが警察OBの天下り幹部。
ふつうのお役人と違って身柄の拘束など公権力を行使する立場だっただけに、民間に行っても頭の中身はなかなか切り替わらないようで、特権を求める人もいるらしい。

「経営陣が創業者一族と天下り、イエスマンしかいないので、ごく一部の上層部だけが過剰に高額な報酬を得ている」(綜合警備保障の30代前半の男性社員)

なかには、こんな会社もある。

「自衛隊や警察の天下りでないと出世は見込めない」(CSP20代前半の男性正社員)

新卒で入り、現場からたたき上げで育ったたベテラン社員は、やりきれないだろう。

成長神話は終焉 残るは低価格競争と淘汰だけ
 
昭和30年代というと、最近は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のようにノスタルジックに語られることが多い。
だが、実際は暴力団や愚連隊や不良生徒が我が物顔に街をのし歩き、強盗や窃盗が多発する殺伐とした社会だった。
それが日本に民間の警備業が誕生したきっかけで、ケネディ暗殺(要人警備)、東京オリンピック(イベント警備)、三億円事件(現金輸送警備)が警備業界を大きく成長させたといわれている。
だが平成20年代の今、成長神話は終わった。
警備にカネをかけるべき建物やイベントや企業活動には、ほとんどサービスが行き渡っている。
その上、街頭の監視カメラ設置が進んだことなどで、犯罪発生件数が昨年までの5年間で224%も減少。
導入の動機という点から見ても警備業界の今後の成長は望み薄だ。
それでも企業秘密や個人情報を守る情報危機管理、高齢化社会に対応し安全、安心を提供するホームセキュリティなど、有望分野はある。
しかし、それはハイテクを利用するため、機械警備を自前で運用し研究開発に取り組めるような大手の話だ。
常駐警備など昔ながらの労働集約型の分野は、過当競争の中小業者が受注価格を叩きあって限られたパイを奪いあいながら、淘汰が進んでいくだろう。
人材派遣業やビル管理会社など異業種からの参入も相次ぎ、首位のセコムが5位の東洋テックに資本参加するなど業界再編に向けた動きもある。
大手のシェアは今後も伸びると思われるが、新規案件が小型化して価格競争も厳しいので利益率はむしろ低下しそうだ。
それは、働く社員たちも覚悟している。

「規模が縮小しながらも会社自体が倒産ということはまずありえません。主取引先が金融機関であるため急激な業績の悪化も考えにくいでしょう。しかし飛躍的に業績が伸びるということも考えづらい」(綜合警備保障の20代後半の男性社員)

警備業界は今後、よほど大きな技術革新が生まれるか、多角化で高収益が望める分野に打って出ない限り、社員の待遇や労働環境の向上はあまり望めないといえるだろう。

2012/7/12
(木)15:50 キャリコネ

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