警備業界、警備会社、警備員における問題点: 6月 2017   

2017年6月16日金曜日

担当者「電話中」で遅れ… セコムの犯人撃退システム 窃盗犯が去った40秒後に作動 画像確認が遅すぎた、と東京地裁判決

BuzzFeed News『担当者「電話中」で遅れセコムの犯人撃退システム 
窃盗犯が去った40秒後に作動 画像確認が遅すぎた、と東京地裁判決』より 2017/06/14


2012年の暮れ、都内の中古ブランド品を扱う店舗に2人組の窃盗犯が入った。その店舗には、煙と音で犯人を撃退するセコム社のセキュリティシステムがあった。
ところが、そのシステムが作動したのは、窃盗犯が逃げ去った後だった。
この点について、店舗側がセコム社と保険会社に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁(吉村真幸裁判長)は614日、セコムについて「対応が遅かった」「債務不履行があった」と問題を指摘する判決を下した。
その一方で、盗難品などの損害賠償については、セコムの警備請負契約についていた高額商品特約でセコム社が免責されるため、保険会社が支払うべきだと判断。
セコム損害保険に約1100万円、東京海上日動火災に約700万円の支払いを命じた。

そもそも、どんな事件だったのか。

犯行の様子は、店舗内の防犯カメラに残されていた。
BuzzFeed Newsはその映像を入手した。
20121216日午前538分ごろ、覆面をした2人組の犯人が、ビルのドアをバールを使って130秒ほどでこじ開けた。
犯人2人は階段で2階に上ると、午前53958秒、店舗ドアをバールでたたき割り、店舗内に侵入した。
店舗に入る2人組。
犯人のうち1人はバールでショーケースを壊してまわった。
もうひとりがその後から、高級時計などを盗って回った。
店内を物色する犯人たち。
犯人たちが店内を物色していたのは約1分間。
2人組は、高級ブランドバッグを複数抱えて、ドアから逃走した。
犯人たちはまだ捕まっていない。
店を出て行く犯人たち。

防犯システムは?

セコム社の説明によると、煙で犯人を撃退するシステム「フォギーユニット」は、万が一泥棒が侵入した際、大きな音と白煙で撃退するものだ。
監視カメラの映像などで異常を確認したセコムの社員が、遠隔操作でスイッチを押すと、現場が白煙で満たされるという仕組みとなっている。
ところが今回、この「フォギーユニット」が作動したのは、犯人が店舗から出ていった約40秒も後だった。
防犯カメラには、すでに無人となった店舗内に、白煙が充満していく様子が記録されていた。

なぜ、時間がかかったのか。

判決によると、セコムのコントロールセンターは犯人が店に侵入してすぐの午前540分頃、異常信号を受信した。
ところがそのとき、コントロールセンターの担当者は、この直前に異常信号を受信した物件に、電話をかけていた。
この担当者は直前1分間に4件の異常信号を受信していたという。
担当者はこの電話を切った後、はじめて犯行現場の画像を確認した。
そして541分ごろ、フォギーユニットを作動させた。
煙が噴出したのは、犯人が去ってから40秒後だった。
判決はこの点について、「異常信号を受信し、違法行為を認識した場合に一定の対応をとることが被告セコムの義務となっている以上、少なくとも異常信号を受信した場合には、遅滞なく契約物件から受信する画像、音声等を確認すべき義務があるといえる」と指摘。
「(画像送信から)約1分後に確認するのは、被告セコムの対応が遅滞していたと評価せざるを得」ないとした。

記者会見

店舗側の代理人・加茂隆康弁護士は判決後、東京・霞が関の司法クラブで記者会見し「日本トップの警備会社なのに、セコムの対応はずさんだった。異常が相次ぐことはあるだろうが、すぐに対応できる人員配置をすべきだった」と主張した。
一方セコムは、BuzzFeed Newsの取材に対し「判決文を確認していないので、コメントは控えさせていただきます」とコメントした。

渡辺一樹 BuzzFeed News Reporter, Japan

BuzzFeed News『担当者「電話中」で遅れ… セコムの犯人撃退システム 
窃盗犯が去った40秒後に作動 画像確認が遅すぎた、と東京地裁判決』より 2017/06/14


2017年6月7日水曜日

バイク同士の正面衝突事故は交通誘導ミスと判断、警備員を書類送検

Response 「バイク同士の正面衝突事故は交通誘導ミスと判断、警備員を書類送検」より 2017/06/06



昨年12月に福岡県北九州市八幡東区内の県道で発生したバイク同士の衝突死傷事故について、福岡県警は5日、現場となった区間で交通誘導を行なっていた警備員2人と、現場責任者1人を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。

福岡県警・八幡東署によると、問題の事故は2016129日の午後210分ごろ発生している。
北九州市八幡東区河内1丁目付近の県道を走行していた2台のバイクが正面衝突して転倒。
一方のバイクを運転していた39歳の男性が胸部強打で死亡するとともに、もう一方のバイクを運転していた53歳の男性も重傷を負った。

現場は片側1車線の緩やかなカーブが連続する区間だが、事故当時は補修工事のために1車線の通行を規制して片側交互通行を実施。
規制区間の両端には警備員を配置し、無線連絡による交通誘導を行なっていたが、事故を起こしたバイクについては双方とも抑止や通行の連絡をしておらず、これによって事故に至ったものと判断された。

このため警察では事故当時の現場にいた警備員2人と、この2人を指導や管理する立場にあった現場責任者に事故の責任が生じているとして、この3人を業務上過失致傷容疑で、実際に事故を起こした双方のバイク運転者を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失傷害、過失致死)で書類送検した。

誘導を行なっていた警備員の過失で交通事故が発生したと判断され、書類送検に至るケースは福岡県では今回が初となる。

《石田真一》

Response 「バイク同士の正面衝突事故は交通誘導ミスと判断、警備員を書類送検」より 2017/06/06


イオングループの警備会社 未払いの残業代調査へ

NHK NEWS WEB 「イオングループの警備会社 未払いの残業代調査へ」より 2017/06/01


流通大手、イオンのグループの警備会社が、社員に支給すべき残業代を支払っていないケースがあったとして、およそ2000人の全従業員と、退職者について調査を行い、未払いの残業代が確認できれば支給することを決めました。
イオンの商業施設などで警備を行っているグループ会社の「イオンディライトセキュリティ」は、先月、千葉地方裁判所で行われた裁判で、50代の男性社員に対して未払いの残業代があったとして、およそ180万円の賠償を命じられました。

この判決を受けて会社では、1日、社員やパートなどおよそ2000人の全従業員と退職者を対象に、未払いの残業代がないか調査することを決めました。

調査の方法や支払いの方法など具体的なことは組合側と協議して決めたいとしていますが、ことし中に調査を終え、未払いの残業代が確認できれば支給するとしています。

イオンディライトセキュリティは「これを機会に労使一体となって働き方改革を進め、職場環境の整備なども進めていきたい」と話しています。

NHK NEWS WEB 「イオングループの警備会社 未払いの残業代調査へ」より 2017/06/01



イオン関連会社に仮眠分の支払命令、「労働時間」とは

企業法務ナビ「イオン関連会社に仮眠分の支払命令、「労働時間」とは」より 2017/05/19


はじめに

警備会社「イオンディライトセキュリティ」(大阪市)の男性従業員が宿直の仮眠も労働時間に当たるとして未払い残業代の支払を求めていた訴訟で千葉地裁は17日、原告の主張を認め未払い分等約180万円の支払を命じました。
今回はどのような場合に賃金支払義務が生じるのか、労働時間について見ていきます。

事件の概要

判決文等によりますと、原告の男性(52)は2011年に同社に入社し、都内や千葉市内のスーパーで警備を行ってきました。
千葉市内のスーパーで働いていた2013年1月から同年8月までは24時間勤務で4時間の仮眠時間と30分の休憩時間がありました。
同社では仮眠時間は労働時間から除外するとして賃金は支払ってきませんでした。
また仮眠時間中も警備体制の継続を求め、外出も認められず、制服のまま仮眠し異常事態に即応できる耐性を維持していたとのことです。
男性は仮眠時間も労働時間に該当するとし、また支払請求後の別の部署への異動命令も不当な配置転換であるとして未払賃金と慰謝料含め約700万円の支払を求め千葉地裁に提訴していました。

労働時間とは

使用者は被用者に対し、労働時間に応じた賃金を支払う義務を負います。
では「労働時間」とはどのようなものを言うのでしょうか。
この点については労働基準法に明確な定義規定は置かれておりませんが、一般的には「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされております。実際に労働に従事している時間だけでなく何らかの形で指揮命令下に置かれていると評価できる時間も労働時間とみなされるということです。
例えば定時前後の更衣や清掃、店頭での客を待っている時間、休憩時間中の電話番なども労働時間に該当すると言えます。
それでは警備員等の仮眠時間は労働時間に当たるのでしょうか。

判例の考え方

この点につき最高裁は「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる」とし、「仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられている」として仮眠時間も労働時間に該当すると判断しました。
また「実作業への従事の必要が生じることが皆無に等しい」場合でなければ「労働からの解放が保障」されているとは言えないとしました(最判平成14年2月28日)。

コメント

以上のように「労働時間」に該当し賃金の支払い義務が発生するかは「労働からの解放が保障」されているかを客観的に判断することになります。
類似のケースで仮眠中は電話や警報への対応を他の従業員とローテーションを組んで交代で対応していた場合は実質的に「実作業への従事」の可能性が極めて低いことから労働時間該当性が否定されました。
本件では同社の警備員は仮眠中は制服も脱がずに異常事態に即応できる状態を強いられ、また他の警備員とローテーションを組んでいたという事実もなかったことから千葉地裁は仮眠時間や休憩時間も「労働から解放」されていたとは言えないとし労働時間に当たると判断しました。
このように労働時間に当たるかは従業員との労働契約ではなく「指揮命令下に置かれているか」「労働からの解放が保障」されているかを実情から客観的に判断されます。
仮眠時間だけでなく社員旅行や慰安旅行といった場合でも指揮命令に基づく強制と言えないかについて留意することが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビ「イオン関連会社に仮眠分の支払命令、「労働時間」とは」より 2017/05/19