警備業界、警備会社、警備員における問題点: 2017   

2017年11月9日木曜日

差額どこに…? 辺野古警備費 実際の支払い日当9千円~1万円

沖縄タイムス「差額どこに…? 辺野古警備費 実際の支払い日当9千円~1万円」より 2017/11/9


会計検査院が、辺野古沖警備費の過大支払いを指摘したことで、警備を請け負うライジングサンセキュリティーサービス(東京)と子会社のマリンセキュリティー(沖縄市)の関係者からは「差額分は一体何に使われたのか」「(見積もりの)言い値がまかり通ってきた結果だ」など批判の声が相次いだ。
新基地建設に抗議する市民からは発注者の防衛省と警備会社の「癒着を疑う」との指摘も上がった。
元従業員の男性は「実際に支払われた人件費と多く見積もられた差額は一体どこにいったのか。
会社にはきちんと説明する責任がある」と憤った。

マリン社は昨年、残業代の未払いで沖縄労働基準監督署から改善指導を受け、支払いに応じた。
だが複数の関係者は、会社が支払った未払い分について「一部では実際の勤務時間と額に差がある」と明かした上で、「無駄遣いをする分があるならきちんと従業員に支払うべきだ」と訴えた。

別の関係者は「見積もりの段階で是正はできたはず。
出来レースではないか」と批判。
ある程度企業の利益は認められるとしながらも「実際に支払われた額と開きがありすぎる。
検査院はもっと突っ込んで調べるべきだ」と強調した。

「出るべくして出た指摘」。
従業員の男性は残業代未払いや燃料の海中投棄問題などを挙げ、「会社は利益本位で従業員のことを考えていない。
半ばあきれている」と話した。

ライジング社とマリン社は新基地建設に抗議する市民の顔や名前を特定し、沖縄防衛局に報告するという表現の自由の侵害行為も明らかになっている。
ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は「防衛局がこれだけ問題を起こしているブラック企業と契約を続けてきたことがおかしい。癒着が強く疑われる」と指摘する。

「海上警備だけでなく、工事全体が巨大な利権になっている。検査院には実態を徹底的に明らかにするよう、納税者としても求めたい」と語った。

沖縄タイムス「差額どこに…? 辺野古警備費 実際の支払い日当9千円~1万円」より 2017/11/9

2017年10月6日金曜日

イオン警備会社に是正勧告

ロイター「イオン警備会社に是正勧告」より 2017/10/05


イオングループの警備会社で、全国で事業を展開する「イオンディライトセキュリティ」(大阪市)が、東京都内の5カ所の警備現場で違法な長時間労働をさせたとして、労働基準監督署が同社に是正勧告していたことが4日、分かった。
勧告対象の現場の社員は、7月時点で計44人。
過労死ラインとされる月100時間を超える残業を繰り返していたという。
勧告は9月29日付。
警備業界では深刻な人手不足のため、長時間労働が常態化している企業が後を絶たない。
7月にも全国展開する警備会社「コアズ」(名古屋市)が、残業代未払いで仙台労基署から是正勧告を受けたことが発覚している。

【共同通信】

ロイター「イオン警備会社に是正勧告」より 2017/10/05


業界別M&A動向レポート[警備業界]

M&A Online「業界別M&A動向レポート[警備業界]」より 2017/09/30


M&Aが活発な業界のひとつ 経営基盤の強化は各社共通の課題に

警備業者の業務は、オフィスビルの「守衛」から「交通誘導」、建物にセンサーを設置し、異変を察知したら警備員が駆けつける「機械警備」まで幅広い。
警備業者の9割以上は常駐・巡回警備や交通誘導を手がける。
警備業界はM&Aが活発な業界のひとつである。
とりわけ、インフラ整備など大がかりな設備投資が求められ、スケールメリットを享受しやすい機械警備が主流になるにつれ、M&Aに乗り出す企業が続出している。
業界最大手のセコム<9735>はもともと、M&Aに積極的な企業として知られ、合併・吸収を通じて事業領域を拡大してきた。
2012年にはセコムが防災品メーカーのニッタンを子会社化し、防災事業を展開。
同年、綜合警備保障は防災機器大手であるホーチキへの出資比率を引き上げ、関係を強化すると共に、商品の共同開発などを手がける。
防犯意識の高まりなど心理的ニーズが増える一方で、事業法人向けの伸びは鈍化するなど懸念もあり、グループ化による経営基盤の強化は重要課題とされる。

図:警備業者の売上高



警備業者の売上高推移(単位:億円)
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
31,304
32,675
31,988
32,662
33,391
33,547
34,237


異業種からの参入、異業種への進出も活発に
 
異業種から警備業に参入する大企業も増えている。
現金輸送の警備を主力とするアサヒセキュリティはもともとダイエー<8263>の店舗売上金を運搬する子会社として設立されたが、MBOによる独立を経て、豊田自動織機<6201>の全額出資子会社となり、手広くビジネスを展開している。
異業種から参入の大半は雇用対策の一環であるが、親会社への依存を脱却し、グループ外の契約獲得を目指して積極的な事業拡大を図る企業も見受けられる。
セコムや綜合警備保障(ALSOK)<2331>といった業界大手・準大手がM&Aや業務提携を通じて、異業種に乗り出す動きも盛んだ。
セコムは1998年に中堅損害保険会社を買収し、保険事業に進出。
ほかにもメディカル事業から防災、不動産に至るまで全方位的に家庭生活全般を支援する複合サービスを展開している。
一方、綜合警備保障は20132月、在宅介護や有料老人ホーム事業などを展開するツクイ<2398>との業務提携を発表。
同年4月より介護とセキュリティのノウハウを融合した救急対応サービスをスタートさせている。 
中小企業にとって、多大な初期投資が必要な機械警備は手を出しづらく、後継者不足などから廃業を余儀なくされるケースも後を絶たない。
こうした企業を大手企業がM&Aを通じて、傘下におさめる事例も多い。
経営の安定はもちろん、経験豊かな人材を確保できるという魅力も捨てがたい。
今後、M&Aによる大企業の多角化、中小企業の統廃合はますます進むことだろう。

M&A情報誌「SMART 2013年秋号」の記事を基に再構成しております

まとめ:M&A Online編集部

M&A Online「業界別M&A動向レポート[警備業界]」より 2017/09/30


長時間残業セコムに勧告 指令役社員協定超え

毎日新聞「長時間残業セコムに勧告 指令役社員協定超え」より 2017/09/21


警備員に指令を出す「管制員」の社員数人に労使協定の上限を超える長時間残業をさせたとして、警備業最大手のセコム(東京都)が、東京労働局渋谷労働基準監督署から労働基準法違反(労働時間)で是正勧告を受けたことが分かった。
勧告は7月5日付。
同社によると、労働組合と変形労働時間制の労使協定を結び、残業の上限を3カ月で120時間以内、繁忙期(合計半年間)は同230時間以内と定めていた。
しかし、2016年度に東京都世田谷区内の同社施設に勤務する管制員数人に対し、繁忙期以外にも3カ月で120時間を超える残業をさせたと指摘された。
同社は今月5日、労基署に「離職や人事異動、(天災などの)突発的な業務量の増大が原因」と報告。
人員を増やし、今月末までに違法状態は解消される見通しだとしている。
変形労働時間制は時期や季節によって仕事量の差が大きい場合に、期間中(セコムの場合3カ月間)の労働が平均で週40時間以内なら、特定の日や週に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えても残業代を払わなくてよい制度。
同社コーポレート広報部は「是正勧告を受け止め、全国の職場で再発防止に取り組んでいる」と話している。

【早川健人】

毎日新聞「長時間残業セコムに勧告 指令役社員協定超え」より 2017/09/21


建設業界だけじゃない! オリンピックで過労死が懸念される警備業界の実態

YAHOO!JAPANニュース「建設業界だけじゃない! オリンピックで過労死が懸念される警備業界の実態」より 2017/09/15


オリンピックの裏側で起きる、もう一つの長時間労働

7月、新国立競技場の建設工事を担当していた建設会社の新入社員が2017年3月に過労自死していた事実が大きく報道された。
報道によれば、彼が自殺する直前1カ月の時間外労働は200時間を超えていたという。
非常に深刻な事件であり、建設業界の長時間労働の改善は急務である。
一方で、オリンピックの裏側で長時間労働が予想される業界は、建設だけにとどまらない。
試合を放送するメディア業界や、世界中からの客が集まる宿泊・観光業界などでも労働条件の悪化が予測される。
実は、これらの業界と並んで過酷労働が懸念されるのが、警備業界である。
試合会場における警備の仕事が、参加者の安全を守るために非常に重要であることは、言うまでもないだろう。
しかし、警備業界が日頃から過酷な長時間労働であることは、あまり知られていないのではないだろうか。
7月、そんな警備業界の過酷な実態が明らかになるニュースが報道された。


警備員に長時間労働や残業代未払いが横行している現状では、警備員は疲弊して退職し、新たな人材も集まらない。
オリンピックを安全に運営するためにも、警備会社の労働環境が適切に改善されることは非常に重要だ。
本記事では、この事件を中心に、警備業界の問題を紹介していきたい。

400時間の「殺人的」長時間労働、5か月間で休日はわずか1日

今回報道された警備会社は、全国で事業を展開する警備会社「コアズ」(本社・名古屋市)である。
従業員を6400人も抱える、警備業界の大手企業だ。
今年5月、同社は警備を行う社員に残業代を支払わなかったことなどに関し、仙台労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告が出された。
当事者のAさん(30代、男性)らによると、残業は「過労死ライン」を大幅に超えており、月150から200時間に上ることがあったという。
Aさんの勤務実態を示す、具体的な資料を見てみよう。

衝撃的なのは、2017年1月分(同社の給与の支払い期間は、毎月21日~翌月20日になる)の勤務明細表と給与明細だ。


110時間を超えて働くのは当たり前、長いときでは1317時間も連続勤務していることがわかる。
年末年始の1231日から11日には、29時間半連続勤務を行っている。
休みもまったくとれていない。
総合計の労働時間は398時間半。
なんと月約400時間。
残業時間は200時間を優に超えており、過労死基準の80時間の約3倍の240時間近くである。
一方、給与明細を見ると、その長時間労働に対して残業手当はゼロだ。
1円も払われていないのである。


しかも、この月が例外的に長いというわけではない。
2016年10月分~2017年2月分の勤務記録を見てみると、休日は10月2日、12月8日、2月19日の3日間のみ。
5か月間で休みが1日しかない状態だ。
65日間連続勤務、1日休んで今度は73日間連続勤務している。
同社ではこのような労働が、日常的に行われていた。
今回会見した組合員以外にも、同じ支社の正社員は同様の長時間労働であるという。
まさに「殺人的」な長時間労働が横行していたと言って良いだろう。
幸いにもAさんの事業所では過労死した人はいないというが、いつ被害者がでてもおかしくない状況である。
Aさんはこうした状況を改善するため、職場の同僚数名らと労働組合・ブラック企業ユニオンに加盟して、長時間労働を改善するために交渉を続けている。

現場で警備をさせられているだけなのに「管理職」?

ところで、コアズ社は、どのような理由で残業代を払っていなかったのだろうか。
言い換えれば、警備業界の「違法な長時間労働」の構図はどのようなものだろうか。
会社の言い分は、「管理監督者」制度を適用していたということである。
管理監督者とは、ほとんど経営者と同じように労務管理を行い、他の労働者の労働条件や労働時間を決めるなど、他の労働者の仕事を監督する立場にある人のことを指す。
こうした実態のある労働者については、残業代は支払わなくて良いとされている。
だが、同制度の適用は、労働者が出退勤時間を自分で決められる、従業員の採用や解雇をできる、賃金がかなり高いことなどが条件だ。
管理監督者は、労働環境が厳しい業界での悪用が頻発している。
以前にも、保育業界に関して以下の記事を以前書いたので、これも参考にしてほしい。


では、コアズの「管理監督者」はどうだったのだろうか。
Aさんらには何の権限もなく、特段給料も高くなかった。
このような実態に対し、労働基準監督署は彼らを「管理監督者」と認めず、会社に残業代を支払うように是正勧告を出したのである。
ユニオンとの団体交渉中においても、会社はほとんど管理監督者の法律上の要件を答えられなかったという。
ユニオンが組合員について計算した未払い賃金は一人数百万を超え、1000万円を超える労働者もいた。
会社は管理監督者を無効であることを認め、ブラック企業ユニオンの組合員に対しては、一人ひとり未払い残業時間を計算したうえで、支払いに応じているという。

警備中の「仮眠時間」も労働時間と裁判所が判決

次に、警備業界で多い問題は、「仮眠時間」の扱いである。
「仮眠時間」の問題とは、夜勤を警備業ではよく起こる問題だ。
夜の警備の場合、ほとんどの業務が「何か事態が起きた時に対応する」こととなる。
ある意味では「待機しているのが仕事」というわけだ。
そこで警備会社としては、何かが起こるまでを「休憩時間」としてすることで、大幅に人件費を減らすことができる。
だが、これでは労働者は夜中拘束されているにもかかわらず、まともな賃金が支払われないことになってしまう(本来であれば、むしろ深夜勤務には深夜割増賃金が発生する)。
もちろん、裁判所はこのような扱いを認めていない。
つい先日も、仮眠時間を休憩時間と認めない裁判所の判決が最近出たばかりだ。


このように、「休憩」時間が実際には待機時間となっていた場合、そこは賃金を支払う義務が発生するのだが、大手警備会社でも違法な扱いが横行しているのが実情である。
ブラック企業ユニオンが団体交渉をしている、コアズ社の警備現場でも、同じように夜勤が「仮眠」や「休憩」とされていたという。
同社では「仮眠」「休憩」とされる時間も、異常があった際はすぐに対応できる状態を保ったままでいなければならず、実際異常があればすぐに対応せざるを得なかったという。
実際は休憩の時間が取れておらず、実際にはやはり、すべて「待機時間」となっていたというわけだ。

2年分で数百万円になるはずの未払残業代が、給料1か月分だけ?

さらに、今回のような労働基準監督署の是正勧告に対し、不当な対応で「乗り切ろう」とする会社も後を絶たない(これは警備業界に限った話ではなく、違法企業全般で引き起こされる現象である)。
今回問題となっているコアズでも、そうした二次被害が報告されている。
コアズでは、是正勧告後、組合員以外の従業員に対しても未払い賃金を支払うとしており、すでに支払いが始まっている。
しかし、ユニオンには、正確に未払賃金を支払われていないとの相談が相次いでいるというのだ。
例えば、本来数百万円に上るはずの過去2年分の未払い残業代を、1か月分程度の賃金(せいぜい20~30万円程度)を支払うことで強引に手を打たせるなどといった方法が、組合員以外の従業員に対してはまかり通っているという相談まであるようだ。
そのうえで、これ以上未払い賃金を請求しないという「同意書」にサインさせているようである。
しかし、よく説明を受けないままこのような書面にサインさせられたとしても、実際の未払分が残っていれば、そのような同意書は無効となり、後から追加で請求は可能だ。
同社に限った話ではないが、労基署の勧告後に、会社からこのような対応を受けている社員・元社員の方がいたら、外部の機関に相談してみるのが良いだろう。
コアズに関しては、ブラック企業ユニオンが、未払賃金を「清算」された社員に対して、労働相談を呼びかけている。

オリンピック中に過労死が続出? 警備業界の早急な労働条件改善を

今回はコアズの例を集中的に紹介したが、先の休憩時間の例のように、他の大手警備会社でも問題が明るみになっており、警備業界全体で違法な労働環境が広がっている可能性が高い。
2020年には、東京でオリンピックが開催される。
オリンピックを前にしなくても日常的に長時間労働が蔓延しているわけだが、オリンピック開催中はさらに大量の警備員が動員され、かつ膨大な長時間労働が待ち受けることになりかねない。
建設会社の労働者は建設中に長時間労働を課せられるが、警備員の場合は、オリンピック開催中の過労死が発生しかねない。
また、テロ対策が叫ばれる中で、警備員がブラックな労働環境を強いられているならば、果たして参加者や観客の安全が適切に守られるのだろうか。
現在、警備業界は人手不足にあえいでいるという。
その人手不足を、既にいる従業員に長時間労働をさせることで乗り切るのではなく、改善策を導入し、働きやすい環境にしていくことで、労働者を集めていくことが必要だ。
コアズも、ブラック企業ユニオンとの交渉の中で、長時間労働の改善策を交渉し始めている。
一朝一夕にはいかないかもしれないが、今から準備しなければオリンピック開催には間に合わない。
改善のためにも、現場の警備員自身が声を上げてほしいと思う。
今回のコアズについても、会社が自発的に改善したわけではなく、従業員のAさんがユニオンに相談に来たことで、全社的な残業代支払いや長時間労働対策が始まっている。
ぜひ、職場環境に問題を感じている警備員の方は、外部の専門機関に労働相談をしてみてほしい。
全国のユニオンや労基署が手助けしてくれるはずだ。

今野晴貴(NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者)

=無料労働相談窓口=

03-6699-9359
soudan@npoposse.jp

03-6804-7650
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03-6600-9359
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YAHOO!JAPANニュース「建設業界だけじゃない! オリンピックで過労死が懸念される警備業界の実態」より 2017/09/15



2017年8月19日土曜日

五輪警備、女性の担い手が不足 愛称や新制服の奇策も業界に強い危機感、働きやすい環境整備急ぐ

NIKKEI STYLE―オリパラSelect―「五輪警備、女性の担い手が不足 愛称や新制服の奇策も業界に強い危機感、働きやすい環境整備急ぐ
」より 2017/7/23


2020年東京五輪・パラリンピックに向け、女性警備員の不足が懸念されている。
全国の警備員のうち女性は約5%。
女性客の身体検査などを円滑に行うため大幅な増員が求められる。
警備会社の業界団体は、女性が働きやすい職場環境を整えたり、イメージ向上のため新たな制服や愛称を導入したりすることを検討している。
「経営者が意識を変えることが最も大切」。
東京都警備業協会(台東区)が6月に開いた研修会。
警備会社の採用担当者ら約80人が、外部講師の女性の話に熱心に耳を傾けた。
警備員は立ち仕事が多く体力的な負担が大きいことなどから、女性の応募が少ない。
「女性はすぐ辞めてしまうという先入観があり、これまで積極的に採用してこなかった」(都内の警備会社幹部)という事情もある。
そんな業界に女性を呼び込もうと、同協会加盟の女性経営者15人は15年、「すみれ会」というグループを結成。
警備現場での女性用トイレの増設、セクハラ対策、育児との両立策など職場環境の改善策について話し合ってきた。
おしゃれな制服づくりについて専門家と議論したりもした。
大阪府や福岡県の警備業協会と連携し、女性警備員の愛称をつくる検討も始めた。
「警備姫」「セキュリティーガール」などの案が出ており、年内にも決めるという。
すみれ会の五十嵐和代会長は「警備は『おもてなし』が求められる仕事。
多くの女性が憧れる職業にしたい」と意気込む。
東京五輪・パラリンピックでは女性の観客の身体検査や会場内の女性トイレ、更衣室の巡回などで1日あたり千人の女性警備員が必要ともいわれる。
警察庁によると、全国の警備員約53万人のうち女性は約3万人。
「このままでは大会を円滑に運営できない」(警備業界関係者)との声は根強い。
危機感を強める全国警備業協会は今夏、女性警備員の活躍ぶりを紹介するコーナーをホームページに新設する。
小沢祥一朗総務課長は「ショッピングセンターなど物腰柔らかな女性が求められる現場は多い。
東京五輪・パラリンピックをきっかけに、女性が活躍できる環境を整備したい」と話している。


[日本経済新聞夕刊2017627日付]

NIKKEI STYLE―オリパラSelect―「五輪警備、女性の担い手が不足 愛称や新制服の奇策も業界に強い危機感、働きやすい環境整備急ぐ
」より 2017/7/23

2017年8月4日金曜日

求人倍率は99.9倍 交通誘導員不足の悲鳴 交通誘導員が確保できず、作業中止に追い込まれる建設現場も

週刊東洋経済Plus-ニュース最前線-「求人倍率は99.9倍 交通誘導員不足の悲鳴 交通誘導員が確保できず、作業中止に追い込まれる建設現場も。」より 2017/08/05

     
「おまえさんみたいな若いもんは、一生こんな仕事就くなよ」──。
7月上旬の真夏日、記者の取材に70歳の交通誘導員の男性はこうつぶやいた。
男性は建設現場でダンプカーの出入りや付近を走る自動車の誘導などを行っている。
炎天下の現場が続き、肌は真っ黒に焼けていた。
公道を使用する工事には、交通誘導員の配置義務がある。
交通量の多い道路なら、交通誘導警備業務検定2級以上の国家資格を持った交通誘導員が必要だ。
だが、その資格に見合った待遇であるとはいいがたい。
山陰地方で交通誘導員として働く50代の佐藤さん(仮名)。
勤めていた食品会社が3年前に倒産し、地元の警備会社に転職した。
勤務時間は817時だが、「人手が足りないときは続けて夜勤、日勤と最長32時間勤務したこともあった」(佐藤さん)。
資格は持っているが、週6日勤務で月給は20万円にも満たない。
劣悪な労働環境などの理由で、交通誘導員の不足が深刻化している。
ハローワークに掲載されている求人によれば、交通誘導員が多数を占める「他に分類されない保安」の2016年度の有効求人倍率は全国で33.7倍。
東京都内に限れば99.9倍にハネ上がる。
国も対策に乗り出した
今年6月には国土交通省が全国の建設・警備業界団体や自治体の入札担当部局に向けて、「交通誘導員の円滑な確保に努めるよう」との通達を出した。
国交省が動いたのは、交通誘導員が手配できず、「工事が止まった現場もある」(福島県の公共工事入札担当者)という、被災地の苦境からだ。
特に昨年4月の熊本地震で被災した九州では、警備業者が少なく、「交通誘導員の確保が最優先」(熊本県の建設会社)。
都内の業者にまで発注がかかるが、「首都圏の仕事だけで手いっぱい」(都内に本社を構えるシンコー警備保障・竹内昭社長)なのが現状だ。
交通誘導員の賃金は、公共工事では建設資材と同じ共通仮設費に区分されていた。
そのため、「社会保険未加入のまま働かせていた業者も少なくなかった」(首都圏の中小警備会社)。
「建設資材と同じ扱いか」との批判もあり、16年度からは他の建設作業員と同じ、人件費として計上されるようになった。
現在、都内で働く有資格者の交通誘導員の日当は約1.4万円。
近年の人手不足を受け、5年前と比べ4割も上昇した。
だが、ダンプカーの運転手などほかの建設作業員と比べても5000円近く低い。
そのうえ、警備業に詳しい仙台大学の田中智仁准教授は、「行政が賃金を高く見積もっても、結局建設業者や警備業者に中抜きされ、交通誘導員に渡る金額は減ってしまう」と指摘する。
冒頭の男性は「何かを生み出すのではなく、何もないことが仕事の成果だ。だからありがたみが理解されにくい」とこぼす。
“ただの棒振り”ではない、彼らの処遇を見直す時が来ているのではないか。

一井 純:東洋経済 記者

週刊東洋経済Plus-ニュース最前線-「求人倍率は99.9倍 交通誘導員不足の悲鳴 交通誘導員が確保できず、作業中止に追い込まれる建設現場も。」より 2017/08/05



2017年7月29日土曜日

残業代払わない「警備会社」に是正勧告…「ケガで歩行困難になっても休めなかった」

弁護士ドットコムNEWS” 残業代払わない「警備会社」に是正勧告「ケガで歩行困難になっても休めなかった」より 2017/07/28


全国で事業を展開する警備会社「コアズ」の仙台支社が、警備業務などを担当する正社員の男性らに残業代を支払っていなかったなどとして、仙台労働基準監督署が是正勧告をおこなったことを受けて、仙台支社につとめる正社員の男性3人らが728日、東京・霞が関の厚生労働記者クラブで記者会見を開いた。
会見に出席した1人で、商業施設での警備を担当している40代男性は、「転んで、足の靭帯を損傷して、歩行困難になったが、人手が足りないため、手術のための休みをとれなかった。自宅でリハビリをつづけている」と語った。
現在も、月100時間を超える時間外労働を続けているという。

「若い人や契約社員が会社に定着せず、どんどん人がやめていく状況」

コアズは警備事業を全国展開しており、大型商業施設などでの業務を請け負っている会社だ。
仙台支社では、一人あたり月150時間〜200時間の時間外労働があったが、名ばかりの管理職とみなして、残業代を一切支払わなかったり、労働条件を明示しなかったりするなど、ずさんな労務管理をしていたとみられる。
会見に出席した30代男性によると、会社側に相談しても「周りの人もやっている普通のことだ」という説明があっただけだったという。
別の30代男性は「家族の時間をもてないことが、自分の中で一番きつかった。何のために仕事をしているのかと。苦しくて、きびしかった」と振り返った。
男性たちが加入する労働組合「ブラック企業ユニオン」の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「若い人や契約社員が会社に定着せず、どんどん人がやめていく状況だった。
残っている正社員は責任感が強く、なかなかやめられない人ばかり。
人を使い捨てる典型的なブラック企業といえる」と話した。
仙台労働基準監督署はことし5月、(1)残業代の未払い、(2)労働条件の明示義務違反、(3)健康診断の定期報告義務違反などで、コアズ仙台支社に対して是正勧告をおこなった。
ブラック企業ユニオンによると、会社側は「全員分の残業代を支払う」としているが、その算出方法・金額などはまだ決まっていない。
組合員(5人)だけでも数千万円にのぼる可能性があるという。


(弁護士ドットコムニュース)

弁護士ドットコムNEWS” 残業代払わない「警備会社」に是正勧告「ケガで歩行困難になっても休めなかった」より 2017/07/28

2017年6月16日金曜日

担当者「電話中」で遅れ… セコムの犯人撃退システム 窃盗犯が去った40秒後に作動 画像確認が遅すぎた、と東京地裁判決

BuzzFeed News『担当者「電話中」で遅れセコムの犯人撃退システム 
窃盗犯が去った40秒後に作動 画像確認が遅すぎた、と東京地裁判決』より 2017/06/14


2012年の暮れ、都内の中古ブランド品を扱う店舗に2人組の窃盗犯が入った。その店舗には、煙と音で犯人を撃退するセコム社のセキュリティシステムがあった。
ところが、そのシステムが作動したのは、窃盗犯が逃げ去った後だった。
この点について、店舗側がセコム社と保険会社に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁(吉村真幸裁判長)は614日、セコムについて「対応が遅かった」「債務不履行があった」と問題を指摘する判決を下した。
その一方で、盗難品などの損害賠償については、セコムの警備請負契約についていた高額商品特約でセコム社が免責されるため、保険会社が支払うべきだと判断。
セコム損害保険に約1100万円、東京海上日動火災に約700万円の支払いを命じた。

そもそも、どんな事件だったのか。

犯行の様子は、店舗内の防犯カメラに残されていた。
BuzzFeed Newsはその映像を入手した。
20121216日午前538分ごろ、覆面をした2人組の犯人が、ビルのドアをバールを使って130秒ほどでこじ開けた。
犯人2人は階段で2階に上ると、午前53958秒、店舗ドアをバールでたたき割り、店舗内に侵入した。
店舗に入る2人組。
犯人のうち1人はバールでショーケースを壊してまわった。
もうひとりがその後から、高級時計などを盗って回った。
店内を物色する犯人たち。
犯人たちが店内を物色していたのは約1分間。
2人組は、高級ブランドバッグを複数抱えて、ドアから逃走した。
犯人たちはまだ捕まっていない。
店を出て行く犯人たち。

防犯システムは?

セコム社の説明によると、煙で犯人を撃退するシステム「フォギーユニット」は、万が一泥棒が侵入した際、大きな音と白煙で撃退するものだ。
監視カメラの映像などで異常を確認したセコムの社員が、遠隔操作でスイッチを押すと、現場が白煙で満たされるという仕組みとなっている。
ところが今回、この「フォギーユニット」が作動したのは、犯人が店舗から出ていった約40秒も後だった。
防犯カメラには、すでに無人となった店舗内に、白煙が充満していく様子が記録されていた。

なぜ、時間がかかったのか。

判決によると、セコムのコントロールセンターは犯人が店に侵入してすぐの午前540分頃、異常信号を受信した。
ところがそのとき、コントロールセンターの担当者は、この直前に異常信号を受信した物件に、電話をかけていた。
この担当者は直前1分間に4件の異常信号を受信していたという。
担当者はこの電話を切った後、はじめて犯行現場の画像を確認した。
そして541分ごろ、フォギーユニットを作動させた。
煙が噴出したのは、犯人が去ってから40秒後だった。
判決はこの点について、「異常信号を受信し、違法行為を認識した場合に一定の対応をとることが被告セコムの義務となっている以上、少なくとも異常信号を受信した場合には、遅滞なく契約物件から受信する画像、音声等を確認すべき義務があるといえる」と指摘。
「(画像送信から)約1分後に確認するのは、被告セコムの対応が遅滞していたと評価せざるを得」ないとした。

記者会見

店舗側の代理人・加茂隆康弁護士は判決後、東京・霞が関の司法クラブで記者会見し「日本トップの警備会社なのに、セコムの対応はずさんだった。異常が相次ぐことはあるだろうが、すぐに対応できる人員配置をすべきだった」と主張した。
一方セコムは、BuzzFeed Newsの取材に対し「判決文を確認していないので、コメントは控えさせていただきます」とコメントした。

渡辺一樹 BuzzFeed News Reporter, Japan

BuzzFeed News『担当者「電話中」で遅れ… セコムの犯人撃退システム 
窃盗犯が去った40秒後に作動 画像確認が遅すぎた、と東京地裁判決』より 2017/06/14


2017年6月7日水曜日

バイク同士の正面衝突事故は交通誘導ミスと判断、警備員を書類送検

Response 「バイク同士の正面衝突事故は交通誘導ミスと判断、警備員を書類送検」より 2017/06/06



昨年12月に福岡県北九州市八幡東区内の県道で発生したバイク同士の衝突死傷事故について、福岡県警は5日、現場となった区間で交通誘導を行なっていた警備員2人と、現場責任者1人を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。

福岡県警・八幡東署によると、問題の事故は2016129日の午後210分ごろ発生している。
北九州市八幡東区河内1丁目付近の県道を走行していた2台のバイクが正面衝突して転倒。
一方のバイクを運転していた39歳の男性が胸部強打で死亡するとともに、もう一方のバイクを運転していた53歳の男性も重傷を負った。

現場は片側1車線の緩やかなカーブが連続する区間だが、事故当時は補修工事のために1車線の通行を規制して片側交互通行を実施。
規制区間の両端には警備員を配置し、無線連絡による交通誘導を行なっていたが、事故を起こしたバイクについては双方とも抑止や通行の連絡をしておらず、これによって事故に至ったものと判断された。

このため警察では事故当時の現場にいた警備員2人と、この2人を指導や管理する立場にあった現場責任者に事故の責任が生じているとして、この3人を業務上過失致傷容疑で、実際に事故を起こした双方のバイク運転者を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失傷害、過失致死)で書類送検した。

誘導を行なっていた警備員の過失で交通事故が発生したと判断され、書類送検に至るケースは福岡県では今回が初となる。

《石田真一》

Response 「バイク同士の正面衝突事故は交通誘導ミスと判断、警備員を書類送検」より 2017/06/06


イオングループの警備会社 未払いの残業代調査へ

NHK NEWS WEB 「イオングループの警備会社 未払いの残業代調査へ」より 2017/06/01


流通大手、イオンのグループの警備会社が、社員に支給すべき残業代を支払っていないケースがあったとして、およそ2000人の全従業員と、退職者について調査を行い、未払いの残業代が確認できれば支給することを決めました。
イオンの商業施設などで警備を行っているグループ会社の「イオンディライトセキュリティ」は、先月、千葉地方裁判所で行われた裁判で、50代の男性社員に対して未払いの残業代があったとして、およそ180万円の賠償を命じられました。

この判決を受けて会社では、1日、社員やパートなどおよそ2000人の全従業員と退職者を対象に、未払いの残業代がないか調査することを決めました。

調査の方法や支払いの方法など具体的なことは組合側と協議して決めたいとしていますが、ことし中に調査を終え、未払いの残業代が確認できれば支給するとしています。

イオンディライトセキュリティは「これを機会に労使一体となって働き方改革を進め、職場環境の整備なども進めていきたい」と話しています。

NHK NEWS WEB 「イオングループの警備会社 未払いの残業代調査へ」より 2017/06/01



イオン関連会社に仮眠分の支払命令、「労働時間」とは

企業法務ナビ「イオン関連会社に仮眠分の支払命令、「労働時間」とは」より 2017/05/19


はじめに

警備会社「イオンディライトセキュリティ」(大阪市)の男性従業員が宿直の仮眠も労働時間に当たるとして未払い残業代の支払を求めていた訴訟で千葉地裁は17日、原告の主張を認め未払い分等約180万円の支払を命じました。
今回はどのような場合に賃金支払義務が生じるのか、労働時間について見ていきます。

事件の概要

判決文等によりますと、原告の男性(52)は2011年に同社に入社し、都内や千葉市内のスーパーで警備を行ってきました。
千葉市内のスーパーで働いていた2013年1月から同年8月までは24時間勤務で4時間の仮眠時間と30分の休憩時間がありました。
同社では仮眠時間は労働時間から除外するとして賃金は支払ってきませんでした。
また仮眠時間中も警備体制の継続を求め、外出も認められず、制服のまま仮眠し異常事態に即応できる耐性を維持していたとのことです。
男性は仮眠時間も労働時間に該当するとし、また支払請求後の別の部署への異動命令も不当な配置転換であるとして未払賃金と慰謝料含め約700万円の支払を求め千葉地裁に提訴していました。

労働時間とは

使用者は被用者に対し、労働時間に応じた賃金を支払う義務を負います。
では「労働時間」とはどのようなものを言うのでしょうか。
この点については労働基準法に明確な定義規定は置かれておりませんが、一般的には「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされております。実際に労働に従事している時間だけでなく何らかの形で指揮命令下に置かれていると評価できる時間も労働時間とみなされるということです。
例えば定時前後の更衣や清掃、店頭での客を待っている時間、休憩時間中の電話番なども労働時間に該当すると言えます。
それでは警備員等の仮眠時間は労働時間に当たるのでしょうか。

判例の考え方

この点につき最高裁は「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる」とし、「仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられている」として仮眠時間も労働時間に該当すると判断しました。
また「実作業への従事の必要が生じることが皆無に等しい」場合でなければ「労働からの解放が保障」されているとは言えないとしました(最判平成14年2月28日)。

コメント

以上のように「労働時間」に該当し賃金の支払い義務が発生するかは「労働からの解放が保障」されているかを客観的に判断することになります。
類似のケースで仮眠中は電話や警報への対応を他の従業員とローテーションを組んで交代で対応していた場合は実質的に「実作業への従事」の可能性が極めて低いことから労働時間該当性が否定されました。
本件では同社の警備員は仮眠中は制服も脱がずに異常事態に即応できる状態を強いられ、また他の警備員とローテーションを組んでいたという事実もなかったことから千葉地裁は仮眠時間や休憩時間も「労働から解放」されていたとは言えないとし労働時間に当たると判断しました。
このように労働時間に当たるかは従業員との労働契約ではなく「指揮命令下に置かれているか」「労働からの解放が保障」されているかを実情から客観的に判断されます。
仮眠時間だけでなく社員旅行や慰安旅行といった場合でも指揮命令に基づく強制と言えないかについて留意することが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビ「イオン関連会社に仮眠分の支払命令、「労働時間」とは」より 2017/05/19


2017年5月27日土曜日

警備業者を労災隠しで送検 本来業務以外の作業での骨折を隠ぺい 横手労基署

労働新聞社「警備業者を労災隠しで送検 本来業務以外の作業での骨折を隠ぺい 横手労基署」より 2016/08/01


秋田・横手労働基準監督署は、労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなかった警備業者の㈱アッセンブル(秋田県横手市)と同社の実質的経営者を労働安全衛生法第100条(報告等)違反の容疑で秋田地検横手支部に書類送検した。
平成26年7月31日、同社労働者が秋田県和賀郡の建設工事現場内で右足のかかとを骨折する労働災害が発生している。
入院期間は1カ月半で、休業は4カ月に及ぶ。
被災者は、同工事現場内で、本来の業務ではない「片付け」を現場内に入って行っていた際に怪我をした。
27年1月に「休業保障が支払われず、国民健康保険で病院を受診している」と労基署に相談を寄せたことから、いわゆる労災かくしが明らかになった。


【平成28年7月6日送検】

労働新聞社「警備業者を労災隠しで送検 本来業務以外の作業での骨折を隠ぺい 横手労基署」より 2016/08/01

2017年5月22日月曜日

時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁

産経デジタル「時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁」より 2017/05/17


警備員として働いていた男性(49)=大阪府=が、過重労働により鬱病を発症し、さらに退職を強要されたとして、会社側に計約1300万円の損害賠償などを求める訴訟を大阪地裁に起こしたことが19日、分かった。
男性は24時間勤務を3日間続け、時間外労働が200時間を超える月もあったと主張している。
一方、会社側は同日開かれた第1回口頭弁論で請求棄却を求めた。
訴状によると、男性は平成19年、大阪市内の警備会社「大阪みなと産業」に正社員として入社。
緊急通報への対応や施設巡回などを担当していた。
勤務はシフト制で、午前9時から翌日午前9時までの24時間勤務が多かった。
当初は仮眠が可能だったが、休憩時間の1時間以外は賃金の支給対象とされるようになり、仮眠が許されなくなったとしている。
次第に心身に不調をきたし、25年3月ごろに鬱病を発症。時間外労働は発症前半年間のいずれの月も、過労死ライン(月80時間が目安)を上回る140時間以上に上り、214時間という月もあった。
労働基準監督署は28年3月、過労と鬱病発症との因果関係を認め、労災と認定した。
訴訟で男性側は「会社は過酷労働に対する方策をとらなかった」と安全配慮義務違反を主張。会社が男性に無断で健康保険や雇用保険の喪失届を提出し、退職を迫るなど違法な退職強要があったとも訴えている。
同社は「詳細はコメントできない」としている。

■「仮眠とるな」劣悪環境

「仕事自体にやりがいは感じていた。今は悔しい気持ちでいっぱい」。
現在も鬱病の治療を続ける原告の男性はこう話した。
2020年東京五輪・パラリンピックを控え、建設業と同様に人手不足が目立つ警備業界。そのしわ寄せは個々の従業員に及び、労働環境に深刻な影を落としている。
「大阪南支社機動隊」。男性が勤務していた会社では警察組織になぞらえ、支社管内の詰め所をこう呼んでいた。
広大なエリアを任され、1日200キロを車で走行することも。
必然的に現場到着が遅れ、クレームも増えた。
男性の証言によれば、会社からは「仮眠をとるな」と指示され、きまじめな性格から忠実に従ったという。
「常に緊張して休まるときがなく、トイレすらゆっくりできなかった」。
同僚が休んだ分も「自分が穴を埋めなければ」と四六時中プレッシャーを感じていたと振り返る。
厚生労働省などによると、警備業では男性が9割以上を占め、年齢別では50代以上が3分の2に上る。
平成28年度の有効求人倍率は3・52倍と人手不足が顕著になっている。
業界をめぐっては、NPO法人・労働相談センター(東京)にも「休憩や仮眠時間が定められていない」といった相談が多く寄せられているという。
担当者は「いつ呼び出しがあるか分からず、ほとんど寝られずに緊張状態に置かれている。年配の人は働き口も少なく、劣悪な処遇が広がっているのでは」と推測した。

産経デジタル「時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁」より 2017/05/17