産経デジタル「時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁」より 2017/05/17
警備員として働いていた男性(49)=大阪府=が、過重労働により鬱病を発症し、さらに退職を強要されたとして、会社側に計約1300万円の損害賠償などを求める訴訟を大阪地裁に起こしたことが19日、分かった。
男性は24時間勤務を3日間続け、時間外労働が200時間を超える月もあったと主張している。
一方、会社側は同日開かれた第1回口頭弁論で請求棄却を求めた。
訴状によると、男性は平成19年、大阪市内の警備会社「大阪みなと産業」に正社員として入社。
緊急通報への対応や施設巡回などを担当していた。
勤務はシフト制で、午前9時から翌日午前9時までの24時間勤務が多かった。
当初は仮眠が可能だったが、休憩時間の1時間以外は賃金の支給対象とされるようになり、仮眠が許されなくなったとしている。
次第に心身に不調をきたし、25年3月ごろに鬱病を発症。時間外労働は発症前半年間のいずれの月も、過労死ライン(月80時間が目安)を上回る140時間以上に上り、214時間という月もあった。
労働基準監督署は28年3月、過労と鬱病発症との因果関係を認め、労災と認定した。
訴訟で男性側は「会社は過酷労働に対する方策をとらなかった」と安全配慮義務違反を主張。会社が男性に無断で健康保険や雇用保険の喪失届を提出し、退職を迫るなど違法な退職強要があったとも訴えている。
同社は「詳細はコメントできない」としている。
■「仮眠とるな」劣悪環境
「仕事自体にやりがいは感じていた。今は悔しい気持ちでいっぱい」。
現在も鬱病の治療を続ける原告の男性はこう話した。
2020年東京五輪・パラリンピックを控え、建設業と同様に人手不足が目立つ警備業界。そのしわ寄せは個々の従業員に及び、労働環境に深刻な影を落としている。
「大阪南支社機動隊」。男性が勤務していた会社では警察組織になぞらえ、支社管内の詰め所をこう呼んでいた。
広大なエリアを任され、1日200キロを車で走行することも。
必然的に現場到着が遅れ、クレームも増えた。
男性の証言によれば、会社からは「仮眠をとるな」と指示され、きまじめな性格から忠実に従ったという。
「常に緊張して休まるときがなく、トイレすらゆっくりできなかった」。
同僚が休んだ分も「自分が穴を埋めなければ」と四六時中プレッシャーを感じていたと振り返る。
厚生労働省などによると、警備業では男性が9割以上を占め、年齢別では50代以上が3分の2に上る。
平成28年度の有効求人倍率は3・52倍と人手不足が顕著になっている。
業界をめぐっては、NPO法人・労働相談センター(東京)にも「休憩や仮眠時間が定められていない」といった相談が多く寄せられているという。
担当者は「いつ呼び出しがあるか分からず、ほとんど寝られずに緊張状態に置かれている。年配の人は働き口も少なく、劣悪な処遇が広がっているのでは」と推測した。
産経デジタル「時間外労働で月200時間超も 過労で鬱、退職強要…元警備員の男性が提訴 大阪地裁」より 2017/05/17
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