警備業界、警備会社、警備員における問題点: 10月 2017   

2017年10月6日金曜日

イオン警備会社に是正勧告

ロイター「イオン警備会社に是正勧告」より 2017/10/05


イオングループの警備会社で、全国で事業を展開する「イオンディライトセキュリティ」(大阪市)が、東京都内の5カ所の警備現場で違法な長時間労働をさせたとして、労働基準監督署が同社に是正勧告していたことが4日、分かった。
勧告対象の現場の社員は、7月時点で計44人。
過労死ラインとされる月100時間を超える残業を繰り返していたという。
勧告は9月29日付。
警備業界では深刻な人手不足のため、長時間労働が常態化している企業が後を絶たない。
7月にも全国展開する警備会社「コアズ」(名古屋市)が、残業代未払いで仙台労基署から是正勧告を受けたことが発覚している。

【共同通信】

ロイター「イオン警備会社に是正勧告」より 2017/10/05


業界別M&A動向レポート[警備業界]

M&A Online「業界別M&A動向レポート[警備業界]」より 2017/09/30


M&Aが活発な業界のひとつ 経営基盤の強化は各社共通の課題に

警備業者の業務は、オフィスビルの「守衛」から「交通誘導」、建物にセンサーを設置し、異変を察知したら警備員が駆けつける「機械警備」まで幅広い。
警備業者の9割以上は常駐・巡回警備や交通誘導を手がける。
警備業界はM&Aが活発な業界のひとつである。
とりわけ、インフラ整備など大がかりな設備投資が求められ、スケールメリットを享受しやすい機械警備が主流になるにつれ、M&Aに乗り出す企業が続出している。
業界最大手のセコム<9735>はもともと、M&Aに積極的な企業として知られ、合併・吸収を通じて事業領域を拡大してきた。
2012年にはセコムが防災品メーカーのニッタンを子会社化し、防災事業を展開。
同年、綜合警備保障は防災機器大手であるホーチキへの出資比率を引き上げ、関係を強化すると共に、商品の共同開発などを手がける。
防犯意識の高まりなど心理的ニーズが増える一方で、事業法人向けの伸びは鈍化するなど懸念もあり、グループ化による経営基盤の強化は重要課題とされる。

図:警備業者の売上高



警備業者の売上高推移(単位:億円)
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
31,304
32,675
31,988
32,662
33,391
33,547
34,237


異業種からの参入、異業種への進出も活発に
 
異業種から警備業に参入する大企業も増えている。
現金輸送の警備を主力とするアサヒセキュリティはもともとダイエー<8263>の店舗売上金を運搬する子会社として設立されたが、MBOによる独立を経て、豊田自動織機<6201>の全額出資子会社となり、手広くビジネスを展開している。
異業種から参入の大半は雇用対策の一環であるが、親会社への依存を脱却し、グループ外の契約獲得を目指して積極的な事業拡大を図る企業も見受けられる。
セコムや綜合警備保障(ALSOK)<2331>といった業界大手・準大手がM&Aや業務提携を通じて、異業種に乗り出す動きも盛んだ。
セコムは1998年に中堅損害保険会社を買収し、保険事業に進出。
ほかにもメディカル事業から防災、不動産に至るまで全方位的に家庭生活全般を支援する複合サービスを展開している。
一方、綜合警備保障は20132月、在宅介護や有料老人ホーム事業などを展開するツクイ<2398>との業務提携を発表。
同年4月より介護とセキュリティのノウハウを融合した救急対応サービスをスタートさせている。 
中小企業にとって、多大な初期投資が必要な機械警備は手を出しづらく、後継者不足などから廃業を余儀なくされるケースも後を絶たない。
こうした企業を大手企業がM&Aを通じて、傘下におさめる事例も多い。
経営の安定はもちろん、経験豊かな人材を確保できるという魅力も捨てがたい。
今後、M&Aによる大企業の多角化、中小企業の統廃合はますます進むことだろう。

M&A情報誌「SMART 2013年秋号」の記事を基に再構成しております

まとめ:M&A Online編集部

M&A Online「業界別M&A動向レポート[警備業界]」より 2017/09/30


長時間残業セコムに勧告 指令役社員協定超え

毎日新聞「長時間残業セコムに勧告 指令役社員協定超え」より 2017/09/21


警備員に指令を出す「管制員」の社員数人に労使協定の上限を超える長時間残業をさせたとして、警備業最大手のセコム(東京都)が、東京労働局渋谷労働基準監督署から労働基準法違反(労働時間)で是正勧告を受けたことが分かった。
勧告は7月5日付。
同社によると、労働組合と変形労働時間制の労使協定を結び、残業の上限を3カ月で120時間以内、繁忙期(合計半年間)は同230時間以内と定めていた。
しかし、2016年度に東京都世田谷区内の同社施設に勤務する管制員数人に対し、繁忙期以外にも3カ月で120時間を超える残業をさせたと指摘された。
同社は今月5日、労基署に「離職や人事異動、(天災などの)突発的な業務量の増大が原因」と報告。
人員を増やし、今月末までに違法状態は解消される見通しだとしている。
変形労働時間制は時期や季節によって仕事量の差が大きい場合に、期間中(セコムの場合3カ月間)の労働が平均で週40時間以内なら、特定の日や週に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えても残業代を払わなくてよい制度。
同社コーポレート広報部は「是正勧告を受け止め、全国の職場で再発防止に取り組んでいる」と話している。

【早川健人】

毎日新聞「長時間残業セコムに勧告 指令役社員協定超え」より 2017/09/21


建設業界だけじゃない! オリンピックで過労死が懸念される警備業界の実態

YAHOO!JAPANニュース「建設業界だけじゃない! オリンピックで過労死が懸念される警備業界の実態」より 2017/09/15


オリンピックの裏側で起きる、もう一つの長時間労働

7月、新国立競技場の建設工事を担当していた建設会社の新入社員が2017年3月に過労自死していた事実が大きく報道された。
報道によれば、彼が自殺する直前1カ月の時間外労働は200時間を超えていたという。
非常に深刻な事件であり、建設業界の長時間労働の改善は急務である。
一方で、オリンピックの裏側で長時間労働が予想される業界は、建設だけにとどまらない。
試合を放送するメディア業界や、世界中からの客が集まる宿泊・観光業界などでも労働条件の悪化が予測される。
実は、これらの業界と並んで過酷労働が懸念されるのが、警備業界である。
試合会場における警備の仕事が、参加者の安全を守るために非常に重要であることは、言うまでもないだろう。
しかし、警備業界が日頃から過酷な長時間労働であることは、あまり知られていないのではないだろうか。
7月、そんな警備業界の過酷な実態が明らかになるニュースが報道された。


警備員に長時間労働や残業代未払いが横行している現状では、警備員は疲弊して退職し、新たな人材も集まらない。
オリンピックを安全に運営するためにも、警備会社の労働環境が適切に改善されることは非常に重要だ。
本記事では、この事件を中心に、警備業界の問題を紹介していきたい。

400時間の「殺人的」長時間労働、5か月間で休日はわずか1日

今回報道された警備会社は、全国で事業を展開する警備会社「コアズ」(本社・名古屋市)である。
従業員を6400人も抱える、警備業界の大手企業だ。
今年5月、同社は警備を行う社員に残業代を支払わなかったことなどに関し、仙台労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告が出された。
当事者のAさん(30代、男性)らによると、残業は「過労死ライン」を大幅に超えており、月150から200時間に上ることがあったという。
Aさんの勤務実態を示す、具体的な資料を見てみよう。

衝撃的なのは、2017年1月分(同社の給与の支払い期間は、毎月21日~翌月20日になる)の勤務明細表と給与明細だ。


110時間を超えて働くのは当たり前、長いときでは1317時間も連続勤務していることがわかる。
年末年始の1231日から11日には、29時間半連続勤務を行っている。
休みもまったくとれていない。
総合計の労働時間は398時間半。
なんと月約400時間。
残業時間は200時間を優に超えており、過労死基準の80時間の約3倍の240時間近くである。
一方、給与明細を見ると、その長時間労働に対して残業手当はゼロだ。
1円も払われていないのである。


しかも、この月が例外的に長いというわけではない。
2016年10月分~2017年2月分の勤務記録を見てみると、休日は10月2日、12月8日、2月19日の3日間のみ。
5か月間で休みが1日しかない状態だ。
65日間連続勤務、1日休んで今度は73日間連続勤務している。
同社ではこのような労働が、日常的に行われていた。
今回会見した組合員以外にも、同じ支社の正社員は同様の長時間労働であるという。
まさに「殺人的」な長時間労働が横行していたと言って良いだろう。
幸いにもAさんの事業所では過労死した人はいないというが、いつ被害者がでてもおかしくない状況である。
Aさんはこうした状況を改善するため、職場の同僚数名らと労働組合・ブラック企業ユニオンに加盟して、長時間労働を改善するために交渉を続けている。

現場で警備をさせられているだけなのに「管理職」?

ところで、コアズ社は、どのような理由で残業代を払っていなかったのだろうか。
言い換えれば、警備業界の「違法な長時間労働」の構図はどのようなものだろうか。
会社の言い分は、「管理監督者」制度を適用していたということである。
管理監督者とは、ほとんど経営者と同じように労務管理を行い、他の労働者の労働条件や労働時間を決めるなど、他の労働者の仕事を監督する立場にある人のことを指す。
こうした実態のある労働者については、残業代は支払わなくて良いとされている。
だが、同制度の適用は、労働者が出退勤時間を自分で決められる、従業員の採用や解雇をできる、賃金がかなり高いことなどが条件だ。
管理監督者は、労働環境が厳しい業界での悪用が頻発している。
以前にも、保育業界に関して以下の記事を以前書いたので、これも参考にしてほしい。


では、コアズの「管理監督者」はどうだったのだろうか。
Aさんらには何の権限もなく、特段給料も高くなかった。
このような実態に対し、労働基準監督署は彼らを「管理監督者」と認めず、会社に残業代を支払うように是正勧告を出したのである。
ユニオンとの団体交渉中においても、会社はほとんど管理監督者の法律上の要件を答えられなかったという。
ユニオンが組合員について計算した未払い賃金は一人数百万を超え、1000万円を超える労働者もいた。
会社は管理監督者を無効であることを認め、ブラック企業ユニオンの組合員に対しては、一人ひとり未払い残業時間を計算したうえで、支払いに応じているという。

警備中の「仮眠時間」も労働時間と裁判所が判決

次に、警備業界で多い問題は、「仮眠時間」の扱いである。
「仮眠時間」の問題とは、夜勤を警備業ではよく起こる問題だ。
夜の警備の場合、ほとんどの業務が「何か事態が起きた時に対応する」こととなる。
ある意味では「待機しているのが仕事」というわけだ。
そこで警備会社としては、何かが起こるまでを「休憩時間」としてすることで、大幅に人件費を減らすことができる。
だが、これでは労働者は夜中拘束されているにもかかわらず、まともな賃金が支払われないことになってしまう(本来であれば、むしろ深夜勤務には深夜割増賃金が発生する)。
もちろん、裁判所はこのような扱いを認めていない。
つい先日も、仮眠時間を休憩時間と認めない裁判所の判決が最近出たばかりだ。


このように、「休憩」時間が実際には待機時間となっていた場合、そこは賃金を支払う義務が発生するのだが、大手警備会社でも違法な扱いが横行しているのが実情である。
ブラック企業ユニオンが団体交渉をしている、コアズ社の警備現場でも、同じように夜勤が「仮眠」や「休憩」とされていたという。
同社では「仮眠」「休憩」とされる時間も、異常があった際はすぐに対応できる状態を保ったままでいなければならず、実際異常があればすぐに対応せざるを得なかったという。
実際は休憩の時間が取れておらず、実際にはやはり、すべて「待機時間」となっていたというわけだ。

2年分で数百万円になるはずの未払残業代が、給料1か月分だけ?

さらに、今回のような労働基準監督署の是正勧告に対し、不当な対応で「乗り切ろう」とする会社も後を絶たない(これは警備業界に限った話ではなく、違法企業全般で引き起こされる現象である)。
今回問題となっているコアズでも、そうした二次被害が報告されている。
コアズでは、是正勧告後、組合員以外の従業員に対しても未払い賃金を支払うとしており、すでに支払いが始まっている。
しかし、ユニオンには、正確に未払賃金を支払われていないとの相談が相次いでいるというのだ。
例えば、本来数百万円に上るはずの過去2年分の未払い残業代を、1か月分程度の賃金(せいぜい20~30万円程度)を支払うことで強引に手を打たせるなどといった方法が、組合員以外の従業員に対してはまかり通っているという相談まであるようだ。
そのうえで、これ以上未払い賃金を請求しないという「同意書」にサインさせているようである。
しかし、よく説明を受けないままこのような書面にサインさせられたとしても、実際の未払分が残っていれば、そのような同意書は無効となり、後から追加で請求は可能だ。
同社に限った話ではないが、労基署の勧告後に、会社からこのような対応を受けている社員・元社員の方がいたら、外部の機関に相談してみるのが良いだろう。
コアズに関しては、ブラック企業ユニオンが、未払賃金を「清算」された社員に対して、労働相談を呼びかけている。

オリンピック中に過労死が続出? 警備業界の早急な労働条件改善を

今回はコアズの例を集中的に紹介したが、先の休憩時間の例のように、他の大手警備会社でも問題が明るみになっており、警備業界全体で違法な労働環境が広がっている可能性が高い。
2020年には、東京でオリンピックが開催される。
オリンピックを前にしなくても日常的に長時間労働が蔓延しているわけだが、オリンピック開催中はさらに大量の警備員が動員され、かつ膨大な長時間労働が待ち受けることになりかねない。
建設会社の労働者は建設中に長時間労働を課せられるが、警備員の場合は、オリンピック開催中の過労死が発生しかねない。
また、テロ対策が叫ばれる中で、警備員がブラックな労働環境を強いられているならば、果たして参加者や観客の安全が適切に守られるのだろうか。
現在、警備業界は人手不足にあえいでいるという。
その人手不足を、既にいる従業員に長時間労働をさせることで乗り切るのではなく、改善策を導入し、働きやすい環境にしていくことで、労働者を集めていくことが必要だ。
コアズも、ブラック企業ユニオンとの交渉の中で、長時間労働の改善策を交渉し始めている。
一朝一夕にはいかないかもしれないが、今から準備しなければオリンピック開催には間に合わない。
改善のためにも、現場の警備員自身が声を上げてほしいと思う。
今回のコアズについても、会社が自発的に改善したわけではなく、従業員のAさんがユニオンに相談に来たことで、全社的な残業代支払いや長時間労働対策が始まっている。
ぜひ、職場環境に問題を感じている警備員の方は、外部の専門機関に労働相談をしてみてほしい。
全国のユニオンや労基署が手助けしてくれるはずだ。

今野晴貴(NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者)

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