警備業界、警備会社、警備員における問題点: 8月 2017   

2017年8月19日土曜日

五輪警備、女性の担い手が不足 愛称や新制服の奇策も業界に強い危機感、働きやすい環境整備急ぐ

NIKKEI STYLE―オリパラSelect―「五輪警備、女性の担い手が不足 愛称や新制服の奇策も業界に強い危機感、働きやすい環境整備急ぐ
」より 2017/7/23


2020年東京五輪・パラリンピックに向け、女性警備員の不足が懸念されている。
全国の警備員のうち女性は約5%。
女性客の身体検査などを円滑に行うため大幅な増員が求められる。
警備会社の業界団体は、女性が働きやすい職場環境を整えたり、イメージ向上のため新たな制服や愛称を導入したりすることを検討している。
「経営者が意識を変えることが最も大切」。
東京都警備業協会(台東区)が6月に開いた研修会。
警備会社の採用担当者ら約80人が、外部講師の女性の話に熱心に耳を傾けた。
警備員は立ち仕事が多く体力的な負担が大きいことなどから、女性の応募が少ない。
「女性はすぐ辞めてしまうという先入観があり、これまで積極的に採用してこなかった」(都内の警備会社幹部)という事情もある。
そんな業界に女性を呼び込もうと、同協会加盟の女性経営者15人は15年、「すみれ会」というグループを結成。
警備現場での女性用トイレの増設、セクハラ対策、育児との両立策など職場環境の改善策について話し合ってきた。
おしゃれな制服づくりについて専門家と議論したりもした。
大阪府や福岡県の警備業協会と連携し、女性警備員の愛称をつくる検討も始めた。
「警備姫」「セキュリティーガール」などの案が出ており、年内にも決めるという。
すみれ会の五十嵐和代会長は「警備は『おもてなし』が求められる仕事。
多くの女性が憧れる職業にしたい」と意気込む。
東京五輪・パラリンピックでは女性の観客の身体検査や会場内の女性トイレ、更衣室の巡回などで1日あたり千人の女性警備員が必要ともいわれる。
警察庁によると、全国の警備員約53万人のうち女性は約3万人。
「このままでは大会を円滑に運営できない」(警備業界関係者)との声は根強い。
危機感を強める全国警備業協会は今夏、女性警備員の活躍ぶりを紹介するコーナーをホームページに新設する。
小沢祥一朗総務課長は「ショッピングセンターなど物腰柔らかな女性が求められる現場は多い。
東京五輪・パラリンピックをきっかけに、女性が活躍できる環境を整備したい」と話している。


[日本経済新聞夕刊2017627日付]

NIKKEI STYLE―オリパラSelect―「五輪警備、女性の担い手が不足 愛称や新制服の奇策も業界に強い危機感、働きやすい環境整備急ぐ
」より 2017/7/23

2017年8月4日金曜日

求人倍率は99.9倍 交通誘導員不足の悲鳴 交通誘導員が確保できず、作業中止に追い込まれる建設現場も

週刊東洋経済Plus-ニュース最前線-「求人倍率は99.9倍 交通誘導員不足の悲鳴 交通誘導員が確保できず、作業中止に追い込まれる建設現場も。」より 2017/08/05

     
「おまえさんみたいな若いもんは、一生こんな仕事就くなよ」──。
7月上旬の真夏日、記者の取材に70歳の交通誘導員の男性はこうつぶやいた。
男性は建設現場でダンプカーの出入りや付近を走る自動車の誘導などを行っている。
炎天下の現場が続き、肌は真っ黒に焼けていた。
公道を使用する工事には、交通誘導員の配置義務がある。
交通量の多い道路なら、交通誘導警備業務検定2級以上の国家資格を持った交通誘導員が必要だ。
だが、その資格に見合った待遇であるとはいいがたい。
山陰地方で交通誘導員として働く50代の佐藤さん(仮名)。
勤めていた食品会社が3年前に倒産し、地元の警備会社に転職した。
勤務時間は817時だが、「人手が足りないときは続けて夜勤、日勤と最長32時間勤務したこともあった」(佐藤さん)。
資格は持っているが、週6日勤務で月給は20万円にも満たない。
劣悪な労働環境などの理由で、交通誘導員の不足が深刻化している。
ハローワークに掲載されている求人によれば、交通誘導員が多数を占める「他に分類されない保安」の2016年度の有効求人倍率は全国で33.7倍。
東京都内に限れば99.9倍にハネ上がる。
国も対策に乗り出した
今年6月には国土交通省が全国の建設・警備業界団体や自治体の入札担当部局に向けて、「交通誘導員の円滑な確保に努めるよう」との通達を出した。
国交省が動いたのは、交通誘導員が手配できず、「工事が止まった現場もある」(福島県の公共工事入札担当者)という、被災地の苦境からだ。
特に昨年4月の熊本地震で被災した九州では、警備業者が少なく、「交通誘導員の確保が最優先」(熊本県の建設会社)。
都内の業者にまで発注がかかるが、「首都圏の仕事だけで手いっぱい」(都内に本社を構えるシンコー警備保障・竹内昭社長)なのが現状だ。
交通誘導員の賃金は、公共工事では建設資材と同じ共通仮設費に区分されていた。
そのため、「社会保険未加入のまま働かせていた業者も少なくなかった」(首都圏の中小警備会社)。
「建設資材と同じ扱いか」との批判もあり、16年度からは他の建設作業員と同じ、人件費として計上されるようになった。
現在、都内で働く有資格者の交通誘導員の日当は約1.4万円。
近年の人手不足を受け、5年前と比べ4割も上昇した。
だが、ダンプカーの運転手などほかの建設作業員と比べても5000円近く低い。
そのうえ、警備業に詳しい仙台大学の田中智仁准教授は、「行政が賃金を高く見積もっても、結局建設業者や警備業者に中抜きされ、交通誘導員に渡る金額は減ってしまう」と指摘する。
冒頭の男性は「何かを生み出すのではなく、何もないことが仕事の成果だ。だからありがたみが理解されにくい」とこぼす。
“ただの棒振り”ではない、彼らの処遇を見直す時が来ているのではないか。

一井 純:東洋経済 記者

週刊東洋経済Plus-ニュース最前線-「求人倍率は99.9倍 交通誘導員不足の悲鳴 交通誘導員が確保できず、作業中止に追い込まれる建設現場も。」より 2017/08/05