労働省発表 平成9年9月19日(金)
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<課題と雇用高度化策のポイント>
○ 優秀な人材の確保・育成に向けた賃金、労働時間等基本的な労働条件の整備による魅力ある職場づくり
○ 行き過ぎた価格競争からの脱却
(雇用高度化策) ↓
(雇用高度化策) ↓
経営者による雇用管理全般に関する取組の強化
警備員の人材確保システムの整備や能力、業績主義の徹底
サービスに関する品質標準・料金体系の整備
ユーザーへの働きかけと警備業の重要性・有用性の社会へのアピール
警備業は社会の安全を担うセキュリティー産業として、過去30数年で急成長を遂げ、現在では2兆円を越える市場規模に発展している。
さらに、今後の産業・社会の高度化の進展や高齢化社会の到来などに伴い、一層の成長と市場の拡大が見込まれている。
しかしながら一方で、警備料金を巡る過当競争や警備業に対するユーザーや社会の認識の低さ等に起因する警備員の低賃金や長時間労働、また、大部分を占める中小零細企業の経営者自身が雇用管理に対して高い認識を持っていないことなどが隘路となり、優秀な警備員の確保が困難になっているなど様々な問題を抱えている。
しかしながら一方で、警備料金を巡る過当競争や警備業に対するユーザーや社会の認識の低さ等に起因する警備員の低賃金や長時間労働、また、大部分を占める中小零細企業の経営者自身が雇用管理に対して高い認識を持っていないことなどが隘路となり、優秀な警備員の確保が困難になっているなど様々な問題を抱えている。
そこで、現在の警備業が直面している雇用管理上の問題点への対策として以下のような検討を行った。
1 経営者の意識、業界の改革
1 経営者の意識、業界の改革
(1) 基本的な労働条件の整備、職場に魅力を持たせる取組
経営者は雇用管理改善を経営の最重要課題として十分認識することが求められる。
とりわけ、警備業は人が最大の財産であり、各企業としては将来の経営ビジョンを持ち、人を大切にする魅力ある職場づくりを進めていくことが大きな経営課題として求められる。
また、業界団体としても、雇用管理の近代化や体質改善のための指導、支援を行うなど業界の健全な発展に向けた一層の取組強化を図ることが重要である。
(2) 警備業務の質的向上、高付加価値化
中小の業者の中にはユーザーとのコンタクトを特に重視し、各々の現場の特性に応じたサービスが提供できるよう、警備員の個別、具体的な指導を徹底的に行っている企業もみられる。
過剰な価格競争に走るのではなく、業務の質的向上や高付加価値化に努めることが企業の体質を強め、警備員の待遇改善にもつながるものと考えられる。
(3) 業務の効率化、生産性の向上の追求
人が配置されていることが前提とされている職場においては、完全な省力化は難しいものの警報関連機器の導入などによって、業務効率の向上や警備員の負荷の軽減を図ることは可能である。現実に機械化に努め、業務効率向上によるコスト削減を実現している企業もみられるところであり、各企業においても良質かつ安価なサービスの提供をめざしたこうした取組を一層強化すべきである。
(4) サービス品質標準、料金体系の整備
個々の企業においてはユーザーに対し、現場の特殊性やユーザーの要望を考慮しつつ、きめ細かくサービス内容やグレードを決定し、それらに応じた料金体系を提示し理解を得ることが重要である。
業界団体としても企業の自由競争を前提としつつ、ユーザーによりわかりやすい統一した品質標準や料金体系を整備することが必要である。
(5) 業界団体をはじめとした業界全体の取組
サービスの差別化、多様化や水準の向上、さらにはその品質標準、料金体系の整備といった課題の解決のためには、セミナーや講習会等を通じた業界内部の指導、経営者教育の徹底をはじめとした業界全体の取組が必要不可欠である。
2 警備員の資質等向上対策
2 警備員の資質等向上対策
(1) 人材確保、育成、活用への取組強化
各企業としては、警備の質的向上や労働条件の改善を図り、優秀な人材の確保に努めることが重要である。
また、法定教育と合わせて各企業の業務実態に対応した行き届いた教育を常時徹底することが、サービスの品質を維持する上で不可欠である。
女性の活用については、更衣室の整備や勤務時間帯の調整等ユーザーの理解を得つつ女性の受入れ体制を整備することが必要である。
さらに、警備員の採用については、警備員の質的向上のために人材確保システムの整備や警備員の採用説明会実施など業界一体となった採用活動の強化等について検討することが必要である。
(2) 従業員活性化策の充実
警備員が意欲と誇りをもって活き活きと働けるような各種活性化策の検討・充実が必要である。
警備員の業務遂行能力や業績により的確に評価し、優秀な警備員については年齢、勤続年数等を問わず、高い資格、役職を付与するなど、能力、業績主義をより徹底、充実することなどが活性化策として挙げられる。
3.社会的評価の確立
3.社会的評価の確立
(1) 業務の質的向上を通じたユーザーとの信頼関係強化
警備業においては社会的な評価が低いという問題が挙げられているが、第一に警備業務の質的向上と警備員自身の資質向上に努める中で、各企業がユーザーとの信頼関係を強めていくことが重要である。
(2) 料金適正化への働きかけと契約内容明確化
警備業務の質的向上を図る中で、現状の料金体系の見直しと合わせて警備料金水準の適正化についてもユーザーの十分な理解を得ることが必要である。
業界全体としても警備業契約の適正化、明確化に向けてモデル契約の策定や客観的基準に基づいた積算方法の開発、入札価格適正化への取組、優良事例の収集及び普及システムの構築等について具体的検討を行い、その成果の普及、啓発を図っていくことが必要である。
(3) 警備業の重要性、有用性の対外的アピール
警備業や警備員に対して実態以上に「3Kイメージ」が強いなど誤った認識や誤解がある場合があり、業界団体を中心として業界全体はそれらを是正するための対外的なアピールを強化すべきである。
4 個別業務別(警備業法第二条による分類)に見た主要な問題点の改善
施設警備──安全管理体制の強化、休憩時間の取扱等労働時間の定義や管理の明確化、機械化による省力化や業務効率化の一層の推進など
雑踏警備──警備員の就業環境を含めた契約内容の明確化、徹底した教育・指導、中高年や女性の活用、短時間労働者の有効活用や処遇の改善など
輸送警備──業務効率化のための機械化の一層の推進、教育訓練の徹底、防護用具や機械の整備等事故発生を極力回避するための体制整備など
身辺警備──労働時間等警備員の労働条件の整備、教育訓練の徹底、安全機器の導入などによる安全管理体制の強化など
機械警備──料金の適正化、サービスの質的向上、業務の効率化による労働時間短縮の推進、能力主義、実績主義的な人事制度の導入など
(警備業雇用高度化懇談会メンバー)
阿 部 四 郎 (全日通労働組合 東京分会警送地域協議会 執行委員長)
荒 井 勝 彦 (熊本大学法学部 教授)
磯 部 行 雄 (日本労働組合総連合会 組織対策局部長)
小 野 成 力 (綜合警備保障(株) 取締役人事部長)
木 村 清 ((社)全国警備業協会 常務理事)
佐 野 哲 (日本労働研究機構 研究員)
高 柳 正 弘 (セコム(株) 人事担当取締役)
田 中 要 (星光ビル管理労働組合 組合長)
富 岡 國 明 ((株)全日警 専務取締役)
奈 良 照 雄 (大星ビル管理労働組合 執行委員長)
依 光 正 哲(座長) (一橋大学社会学部 教授)
第1回懇談会 平成8年3月29日
第2回懇談会 平成8年4月25日
第3回懇談会 平成8年5月29日
第4回懇談会 平成8年6月20日
第5回懇談会 平成8年7月18日
第6回懇談会 平成8年9月13日
第2回懇談会 平成8年4月25日
第3回懇談会 平成8年5月29日
第4回懇談会 平成8年6月20日
第5回懇談会 平成8年7月18日
第6回懇談会 平成8年9月13日
(五十音順敬称略、役職等は当時のもの)
労働省発表 平成9年9月19日(金)
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